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ANA、発着枠拡大でも翼には年金の重荷

 来年夏ダイヤから1日25便増える羽田空港の国内線発着枠について全日本空輸(ANA)の配分が8便と決まった。日本航空(JAL)の3便に比べて優位に立つが、ANAの営業利益の押し上げ効果は年30億~50億円程度と連結全体(2013年3月期見通しは前期比13%増の1100億円)では微風にすぎない。収益力に磨きを掛けるためには今後、賃金の比較的高いパイロットや手厚い企業年金制度など、「聖域」への斬り込みが欠かせない。

 世界遺産の石見銀山で名高い島根県。出雲、隠岐両空港に次ぐ萩・石見空港は、羽田発着のANA便が1日1往復あるだけだ。庄内(山形)、能登(石川)も定期便はANAのみ。今回の配分を受け羽田におけるANAの発着シェアは37.4%と、JALの40.1%に迫る。ローカル路線を増やすか、新千歳(札幌)や那覇(沖縄)などドル箱路線を太くするか――。新たな発着枠の生かし方が問われる。
 では損益への影響はどうだろう。ANAの国内線利用率は平均60%強。主力の米ボーイング737型機(約170席)で1日8便増やした場合、増収効果も100億円ほどとみられる。燃料費や人件費などを差し引くと「営業利益の押し上げ効果は30億~50億円程度」(SMBC日興証券の板崎王亮シニアアナリスト)との見方は多い。来期1300億円の連結営業利益を目指すANAにとって、影響はひとまずは限定的となりそうだ。

 実際、ANAの運航コストはどれだけ高いのか。航空会社の競争力を推し量る指標にユニットコスト(提供1座席を1キロ運航するための費用)がある。ANAは約13円。JALは11円台半ば、スカイマークは8円をやや下回る水準にある。3社が同じ路線、運賃で運航した場合、コストは如実に収益力の差に出る。燃料費や空港使用料はほぼ同じだから、格差は人件費と航空機の償却費が中心だ。

 ANAは人件費がユニットコストの2割強を占める。JALは15%前後とみられる。例えばパイロットの平均年収はJALが1440万円(平均42歳)に対し、ANAは1989万円(同45歳)。地上職に限っても4割以上の開きがある。こうしたコスト構造の深いところまでメスを入れない限り、収益面でJALに迫るのは難しいだろう。

羽田空港の発着枠配分がコスト見直しを迫る(羽田空港)
 年金制度もそのひとつだ。ANAの企業年金は、給付の基準となる利率(給付利率)が4%台半ばとみられる。上場企業は2%前後が多く、ANAは比較的手厚い給付を維持している。年金の関連費用が年200億円強と、連結営業利益の2割強に相当するほど重い。団塊世代の大量退職などを迎えるなか、今後、年金制度の見直しは「隠れた経営課題」になる。仮に給付利率を下げると企業の負担軽減につながる半面、従業員の受け取る年金は目減りする。
 企業として競争力を優先するか、安定した従業員の福利厚生を維持するか――。単純な二者択一の議論でないことは明白だが、すでに新日鉄住金や日立製作所は給付水準が市場金利に連動する仕組みを取り入れている。三菱重工業は3年ごとに退職者(OB)を一部含めた5万人規模の給付水準を見直す。次回は来年9月ごろの予定だ。

 羽田は今後、国際線を含めた年間発着数を現在の39万回から最終的に44.7万回に引き上げる。25万回の成田も30万回を目指す。航空各社にとっては利用者の利便性や地域経済に貢献しながら、ビジネスを拡大するチャンスになる。JALは法的整理による会計上の利益押し上げ効果が大きく、国土交通省は今回の羽田国内線の発着枠では事実上、「ANAとJALの競争環境が公平になるように配慮した」との見方がある。ひとまず軍配の上がったANAに求められるのは、いっそうの自助努力で収益につなげることだろう。(清水崇史)

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