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政権交代、がらりと変わる株式市場の風景

政権交代、がらりと変わる株式市場の風景
株式市場にとって、今回の政権交代が意味するものは大きい。長く続いた円高トレンドは転換し、円相場が再び1ドル=75円台を目指すような超円高局面は、もう想定しなくていいかもしれないからだ。市場はすでに、政権交代と自民党が求める強力な金融緩和を織り込む形で円高是正の動きを強めてきたが、総選挙での自民党の大勝によって、その流れは今後も継続する可能性が強まった。日本企業と日本の投資家が長く負わされてきた超円高の重荷が肩から降りるとすれば、一時の揺り戻しを挟みながらも、株式市場はしばらくの間、円安メリット相場をエンジョイできる。
■「もう米国は許してくれる」
 秋以降、円相場がトレンド転換する機は熟しつつあった。9月の貿易収支は9月としては過去最大の赤字となり、経常収支も季節調整後で赤字に転落した。4~9月期の決算発表では、日本を代表する優良銘柄だったパナソニックが巨額の赤字見通しを明らかにし、日本企業の競争力の低下を印象づけた。中国では領土問題を巡って激しい反日暴動が起き、地政学的リスクも強く意識しなければならなくなった。一方、海外では欧州債務危機の不安が徐々に後退し、米国景気も緩やかな回復基調を持続。円を買う理由は薄らぎつつあった。
 仮に衆院解散がなかったとしても、日本経済の弱さに着目すれば、いずれ為替市場は円高相場の修正局面を迎えた可能性がある。だが、やはり直接の引き金は自民党の政権復帰が現実味を帯びたことだった。
「自民党の政権復帰で日米関係は正常化に向かう。中国の台頭をけん制する意味もあって、もう米国は円高で苦しむ日本を許してくれるはず」。あるエコノミストの、ちょっとうがった見方だ。
 そのエコノミストによると、円相場が2007年6月の1ドル=124円から昨年10月の75円まで上昇を続けた円高局面は、09年を境にして変質したという。前半は07年まで続いた円安の修正相場で、後半は実体経済からかけ離れた超円高相場だ。転機になったのは09年の民主党への政権交代。「日米中の三角形論」を唱えた鳩山政権に米国は不信の目を向け、米軍普天間基地の移転問題を巡る「Trust me」発言により、日米間の信頼関係は決定的に損なわれた。以来、日本は米国の理解を得られず、大震災後などを除いて効果的な為替介入もできなくなった――。
 こうした見方が正しいのかどうかはわからない。大胆な金融緩和を日銀に迫る安倍晋三・自民党総裁の発言が大きな材料になったのも確かだ。ただ重要なのは、政権交代が為替相場のトレンドを変えるきっかけになり得ると、多くの市場参加者が考えたことだ。
 シカゴ先物市場では、ヘッジファンドなどの非商業部門による円先物の売り持ち高が、足元ではネットで12万枚程度に達したもようという。今年3月の円高是正局面での7万枚弱を超え、リーマン危機後では最大の水準に膨らんだ。この持ち高の積み上がり方を見る限り、ヘッジファンドなどの投資姿勢は明らかにトレンド転換したようにみえる。
07年から続いた円高局面が収束したとすれば、国内の投資家から見える株式市場の風景はがらりと変わる。
 グラフは日経平均株価と米ニューヨークダウ工業株30種平均を円建てとドル建てで示したもの。日経平均はリーマン危機後の戻りが鈍く、低位のボックス圏内で推移してきた。ところがドル建てで見ると、すでにリーマン危機前の高値からの下げ幅の3分の2戻しを達成済みで、国内投資家が感じるほど悲惨な相場ではなかった。一方、リーマン危機後に力強く回復し、史上最高値をうかがう水準まで戻したダウ平均。円建てで見るとリーマン危機前の高値には遠く及ばず、何ともさえない相場に映る。
 つまり、日本の投資家は日本株に投資しても報われなかったばかりか、「円高は海外投資のチャンス」と考えて米国株を買っても、米国投資家のような利益を上げるのは難しかったことになる。すべてはこの間に進んだ円高がもたらした悲劇といえる。しかし円高が止まり、これから円安に向かうとすれば、日米の投資環境は逆転する。日本の投資家にとっては、ようやく国内外の株式に投資する好機が巡ってきたといえるかもしれない。
 大和証券の企業業績予想によると、上場企業の来期(14年3月期)業績は1ドル=80円を前提にして全産業で21%の経常増益になる見通し。増益率は1ドル=85円になれば23%に、90円なら24%になるという。為替変動による変化率はさほど大きくないが、これは円安で収益が悪化する電力や内需企業も含むため。田辺経済研究所代表の田辺孝則氏は「国内での生産比率が高い輸出企業などの中には、5割前後の増益になる企業も出てくるはず」と予想する。当面は輸出関連を中心とした上昇相場で、日経平均は「来年には1万1000円を目指す」というのが田辺氏の見立てだ。
  
自民党の政権復帰については、考慮しておかなければならないリスクもある。例えば財政問題だ。自民党は国土強じん化など積極的な公共投資の積み増しを掲げているが、選挙期間中、財源をどうするかの具体的な言及はほとんど聞かれなかった。組閣後早々に組むという補正予算について、市場では早くも「10兆円程度になりそう」という声が出ているし、来年度予算では「前政権の縛りだった新規国債発行枠は破られるだろう」という見方がある。
 「もしも積極的な公共事業が景気にさほどの効果を上げず、財政ばかりが拡張していくとみられれば、再び日本国債の格下げ機運が高まる」(ニッセイ基礎研究所の矢嶋康次チーフエコノミスト)。居心地のよかった円安が、いつの間にか長期金利の上昇を伴う「怖い円安」に転化する懸念は捨てきれない。
 もっとも、総選挙の焦点だった「自民プラス公明党で320議席超」が実現し、今のところ市場は強気ムード一色。「年末にかけて相場がいったん小休止したとしても、海外の年金基金などが買いに出る年明けから春まではいい相場が続きそう」(三菱UFJモルガン・スタンレー証券の藤戸則弘投資情報部長)という見方が強い。しばらくは、政権交代がもたらした久々の市場の楽観ムードにつかってみたい。

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