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インドネシア「空の安全」後手 急成長ゆえの苦悩

インドネシア「空の安全」後手 急成長ゆえの苦悩
ジャカルタ支局 渡辺禎央

 インドネシアの格安航空会社(LCC)最大手ライオン航空の国内線が13日、人気観光地バリ島の空港で着陸に失敗した。滑走路でなくそばの浅瀬に着水し、胴体が折れる醜態をさらした。安全性への信頼が低い同国航空の事故史が新たな段階に入ったのは、国際基準をクリアしているはずの空港で、製造からわずか1年の機材が事故を起こしたことだ。

滑走路そばの浅瀬に着水、機体が折れたライオン航空のボーイング機(13日、インドネシア・バリ島の国際空港)=ロイター

滑走路そばの浅瀬に着水、機体が折れたライオン航空のボーイング機(13日、インドネシア・バリ島の国際空港)=ロイター

 13日の事故機は108人を乗せたボーイング737―800。2012年製造で、今年3月に運航を始めたばかりだ。事故原因は調査中だが、着陸態勢に入ったものの、何らかの理由で着陸をやめた後に態勢を立て直せなかったもようだ。実は19日にも、同じバリの空港で離陸寸前のライオン航空機が急停止。不具合で修理が必要になるという騒ぎもあった。

 インドネシアは航空事故が多い。従来は老朽化した機体や補修不足が主因だったが、最近は新型機にも拡大。12年はロシアが開発した旅客機「スホイ・スーパージェット(SSJ)100」がデモ飛行の際に山中で墜落。メディア関係者など40人以上が死亡した。ライオン航空でも過去10年で少なくとも約20件の着陸失敗事故が発生。安全基準を満たしていないとして、同社は欧州連合(EU)上空への乗り入れを禁じられている。

 ところが、そんなライオン航空からの受注攻勢に沸くのが欧州エアバスやボーイングだ。3月はエアバスが234機を約184億ユーロ(約2兆4千億円)で受注したばかりだ。航空市場の成長に乗り拡大路線をひた走るライオン航空と、需要を求めて受注競争にまい進する航空機メーカー。両者の利害が一致するホットスポットのインドネシアで今、空の「時限爆弾」の火花がちらつき始めた。

 航空専門家のスジャトマン氏は「パイロットなど人材の数や質が不足。業務過密化で、安全確保が危機にさらされている」と警鐘を鳴らす。インドネシアの航空市場の拡大と人材のギャップは深刻だ。12年に約7200万人だった旅客数は、15年に1億3千万人になる見通し。パイロットも12年の7950人から、14年に8930人が必要となるが「訓練をしっかり受けた人材は足りない」(スジャトマン氏)。

 航空機側だけでなく、空港・管制側も人材逼迫が著しい。運輸省幹部は「航空管制官(ATC)が今年は800人追加で必要」だと指摘。首都の玄関口、スカルノ・ハッタ空港では「本来は300人台のATCが必要だが現状は240人弱にとどまる」(同幹部)という。政府はATCの定年を従来の50歳台後半から65歳に引き上げ、後進の指導にあたらせている。インドネシアでは空港も建設ラッシュだ。増設も含め、13年は12空港が稼働を準備中。15年までにさらに12空港を追加する見通しだ。

 旅客の拡大が続くとはいえ、航空会社の収益環境は決してバラ色ではない。昨年7月、LCCアジア最大手のマレーシアのエアアジアがインドネシアの中堅バタビア航空の買収を発表。しかし同10月、「(買収は)多大なリスクや株主への影響を引き起こしうる」として買収を停止。財務体質に問題があったもようで、実際、今年1月にバタビアは経営破綻した。非上場のライオン航空も財務体質は不透明なままだ。

 最近はメーカー側の様子にも異変がみられる。13日のバリ島の事故からわずか2日後の15日、米連邦航空局(FAA)はボーイングの「737」に「機体が制御不能になる可能性がある」欠陥を発見したとし、検査と部品の改修を命じた。米国外の機材は対象でないが、新興国のLCC向けなどに人気の機種だけに懸念は尽きない。

 東南アジア諸国連合(ASEAN)が15年の航空自由化を目指す中、各国では航空網の急拡大が確実視される。中核となるインドネシア市場の動向を見ていると、他国にも同様の時限爆弾が眠っていないとも限らない。

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