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鳥インフル 中国共産党にもう一つの脅威

鳥インフル 中国共産党にもう一つの脅威

「今のところ珍しい病気が散発的に発生しているにすぎない。恐らく今後もそうだろう」――。4月8日、世界保健機関(WHO)中国事務所のマイケル・オリアリー代表は、人々を安心させようとこう述べた。3月以降、中国で少なくとも9人の命を奪っているH7N9型の鳥インフルエンザウイルスに対する一般の見方は、今のところこういったものだ。

上海の養鶏卸売り市場を消毒する衛生職員=AP

上海の養鶏卸売り市場を消毒する衛生職員=AP

■SARS隠ぺいで感染が拡大

 今回の感染症発生は、「パンデミック」(世界的大流行)に発展することはないとしても、人々の注目を中国新指導部に集めることになった。中国に詳しい専門家は皆、今回のH7N9型の感染拡大と、10年前に中国を中心に広がった「SARS(重症急性呼吸器症候群)」の感染とは、共通している点があると指摘する。

 北京の新聞「リーガルウィークリー」は、「H7N9型インフルエンザの詳細が明らかになるにつれ、10年前に起きたSARS感染拡大の影が再び中国国民の心を覆っている」と報じた。

 SARSの時は、中国政府が当初、流行の事実を隠ぺいしたことで、感染が急速に拡大した。2003年後半に事態が収束するまでにSARSウイルスで770人余りが死亡した。そのうち80%以上が中国(香港を含む)に住んでいた。SARSのために中国への渡航者が激減、国内での移動も妨げられたため、経済活動に大きな混乱が生じた。

■不手際を防ぎたい新指導部

 SARSの流行は、当時就任したばかりだった胡錦濤国家主席と温家宝首相を困らせた。10年後の3月、彼らから権限を移譲された習近平国家主席と李克強首相は間違いなく、同じようなスタートを何としても避けたいと思っているはずだ。当局による隠ぺいや不手際のために、パンデミックあるいはSARS級の大流行となれば、国際社会における中国の評判は深刻なダメージを受けるだろう。

 また、共産党に対する国民の怒りに油を注ぐかもしれない。しかも今回の騒ぎは、ソーシャルメディアの時代に入って初めて起こった、公衆衛生における緊急事態だ。中国国民はソーシャルメディアによって、怒りを共有するかつてない機会を手にしている。

■自衛に走る周辺住民

 中国政府の対応は今のところ、2003年のSARSの時より迅速かつオープンであるようだ。WHOのオリアリー氏は、中国政府と共有している「情報のレベルに満足し、喜んでいる」と語った。3月31日に最初の2人の死者が上海で出たと発表した後、当局は、上海市の市場で売られていた生きた家禽(かきん)類にウイルスがいないか探した。ウイルスが見つかると、当局は速やかに市場を閉鎖し、数千羽の家禽を殺処分した。

 本稿執筆時点で、33人の感染者が出ている(うち9人が死亡)。感染者はすべて上海及びその周辺の省に住んでいた。周辺の省も家禽を処分し、生きた家禽類の販売を禁止している。

 しかし、大衆はまだ、事態に対して政府が効果的に対処していると思うには至っていないようだ。人から人への感染を示すケースはまだ報告されていないものの、上海及び周辺地域の人々は皆いら立ちを感じている。

 このため、これらの地域の薬局では、「板蘭根」という薬が軒並み売り切れになっている。板蘭根はインフルエンザ用の伝統的な薬ではあるが、H7N9型ウイルスに効くかどうかはわからない。さらに、あらゆる鶏肉の売り上げが急減している。上海のマクドナルドは、チキンマックナゲットの価格を引き下げることでこれに対応している。

■豚の大量投棄は未解決

 鳥インフルエンザは最悪のタイミングで上海を襲った。3月に、1万6000頭の豚の死骸が黄浦江の支流に流される事件が起きた。これに関して、多くの市民が今も当局に不信感を抱いているからだ。政府は次のように発表している――豚の死骸に対してインフルエンザウイルスの検査をしたところ、H7N9型ウイルスは検出されなかった。だが、豚の死因についてはまだ何も発表していない。H7N9型ウイルスによる2番目の死者が、豚肉を扱う業者であったことが大衆を不安にしている。

 加えて、国営メディアですら、最初の死者が出てから発表までになぜ27日もかかったかについて疑問を投げ掛けている。当局は、このウイルスが今まで人間で見つかった例がないため、原因究明に時間がかかったとしている。

 さらに、当局は職員の不可解な行動に関する説明もしていない。最初の死者が出た日から3日たった3月7日、衛生当局の職員が、「上海市内のある病院で鳥インフルエンザによる死者が出ている」というソーシャルメディア上の噂を否定した。後に、そのうち1人の死因が鳥インフルエンザであることが証明された。一方、同じ頃亡くなったその息子からは鳥インフルエンザウイルスは検出されなかった。当局は否定しているが、このウイルスが人から人に感染するのではないかという疑いが根強く残っている。

■許可ない情報開示は禁止

 中国の中央政府はSARSの感染拡大以降、感染性疾患が発生した場合に地方当局が隠ぺいしないよう、努力を重ねてきた(2003年以前は、殺処分や隔離などが経済に悪影響をもたらすのを避けるために、地方役人はこうしたことを隠ぺいするのが常だった)。国の緊急事態をメディアが独自に報道するのを禁じていたのを2007年に解禁した。そして2008年、市民から要求があれば、機密ではない情報を開示するよう地方政府に求める法律を導入した。

 しかし、危機の対処において、秘密主義がまだまん延している。政府のウェブサイトを検索すると、感染症の発生を上司に報告することの重要性と同時に、秘密を守る必要性を強調する地方条例が幾つかあることが分かった。吉林省北東部のある行政区が昨年7月に公布した規定は、鳥インフルエンザの事例に関して、鳥インフルエンザ対策室の許可を受けることなく情報公開することを禁じている。

 中国政府は、増大するソーシャルメディアの力をかつてないほど恐れている。H7N9型ウイルスに関する噂をソーシャルメディアで広めたと疑われる人々を警察が一斉検挙している。北京で発行されている雑誌「財経」によると、現時点で少なくとも13人が投獄されている。

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