« 2013年4月 | トップページ | 2013年6月 »

2013年5月

全日空、地上から電池監視 B787運航再開

全日空、地上から電池監視 B787運航再開

 全日本空輸は26日、バッテリートラブルで運航停止していたボーイング787型機の営業運航を臨時便で再開した。来月1日からは全日空のほか日本航空も定期便の運航を始める。収益力強化を担う中核機が復帰するが、バッテリーの新たな安全対策とともに乗客の不安解消も急ぐ必要がある。各社は守りの対策も手を抜けない。

羽田空港に到着した全日空のボーイング787型機(26日)

羽田空港に到着した全日空のボーイング787型機(26日)

 787は既にアフリカのエチオピア航空、米ユナイテッド航空が営業運航を再開。世界最多の18機を保有する全日空はバッテリーの改修作業などを入念に進め約170便の試験飛行を実施した。地上の整備部門が運航機のバッテリーを監視、異常があればすぐに検知できるシステムも整えた。新千歳空港で同社の伊藤博行副社長は「万全の対策を進めてきた」とあいさつした。

 従来機より燃費が2割良い787は航空会社の成長戦略に欠かせない。全日空と日航は巻き返しを急ぐ考えだが、乗客の不安を解消するためインターネットなどを通じ安全対策や試験飛行の結果などの情報公開にも努める。

 全日空が1日から再開する定期便では787の運航路線を増やす。国内線では羽田―秋田線、羽田―富山線(15日から)、国際線でも羽田―台北、成田―北京、成田―上海などを追加。トラブル前には15路線だった787投入路線は18路線に増える。遅れていた787の納入も、2014年3月末には当初計画通りの27機体制となり一段の路線強化につなげる。

| | コメント (0)

NTT、確定拠出年金を導入 グループ9万人 国内最大級

NTT、確定拠出年金を導入 グループ9万人
国内最大級

 NTTグループが運用成績によって受取額が変わる確定拠出年金の導入を労働組合に提案したことが22日、分かった。年金運用に伴う中長期の財務リスクを軽減するとともに、運用方法を従業員本人が選べるようにする。対象者は9万人で国内最大規模となる。株高で従業員による運用環境が改善していることを背景に、確定拠出年金を採用する動きが企業の間に広がる可能性がある。

 現行の年金は将来の給付利率を約束した確定給付年金で、NTT企業年金基金(加入者25万人)と規約型企業年金(9万人)の2つがある。このうち規約型を2014年度から確定拠出年金に移行したい考え。

 確定拠出年金では従業員本人が運用方法を選ぶ。様々な商品メニューを企業が用意するのが一般的。NTTは従業員向け投資セミナーなどで判断材料を提供する。

 制度見直しの背景には将来の年金支給に備えて積み立てるべき額(退職給付債務)に対し、実際の積み立てが不足していることがある。金融危機後の株価低迷などで運用成績が悪かったためだ。企業は本業の利益で不足分を穴埋めするなどの対応を求められる。

 NTTの場合、規約型では2774億円(3月末)の積み立て不足を抱える。確定拠出年金を導入すると、株式市況が悪化しても不足が膨らむリスクを抑えられる。

 14年3月期からは連結決算で、年金の積み立て不足の貸借対照表への計上が義務付けられる。運用低迷が財務悪化に直結しやすくなるため、確定拠出年金導入の機運が高まっており、全日本空輸やパナソニックも14年3月期からの導入を決めている。3月末までの導入社数は1万7328社あるが、株高も背景にさらに導入例が増えそうだ。

| | コメント (0)

安倍相場に焦らず「次」狙え 20代からの株投資

安倍相場に焦らず「次」狙え 20代からの株投資
アベノミクスがバラ色老後に与える影響(3)

 日経平均株価が5年4カ月ぶりに1万5000円台を回復しました。安倍晋三政権にちなみ「アベノミクス相場」や「安倍相場」と呼ばれる今回の株高の特徴は、極めて短期間で急騰したことです。野田佳彦前首相が衆院解散を表明した2012年11月から半年での上昇率は7割に達し、戦後2番目の大相場といわれています。

 これがどれほど急激なスピードか考えてみましょう。資金を持つ人が10年で元本を1.7倍に増やすには、年平均5.5%の利回りが必要な計算になります。年5.5%というのは、1990年代に企業年金が目標としていた運用利回りです。しかし実際にはこの20年間、公的年金や企業年金にとって5.5%のハードルは相当高かったのです。

 つまり今回の株高は、この10年にプロでも達成が難しかった運用成績を10年分まとめて獲得したほどの勢いだということです(実際には分散投資でリスクを抑えるため、日本株だけに投資するわけではありませんが)。

■これからの投資デビューには注意点も

 株式相場の活況を伝えるニュースや解説を読み、「私も株を始めてみようか!」と興味を持ち始めた若い世代の方も多いと思います。しかし、いまから投資を始めることはチャンスでもある半面、注意すべき点もあります。

 まずチャンスととらえてほしいのは、これまで投資をしてこなかった人が実際に投資を経験してみることは一生の財産になるということです。

 このコラムでも3月に「20代から始める 誰でもできる資産運用入門」と題し、投資初心者が陥りがちなミスを防ぐ方法や心構えを紹介しました。4回の連載を通じ、普通の会社員の方もぜひ投資を始めてみてほしいというメッセージを込めています。

 銀行の口座と違い、株式や債券、投信の売買に使う証券口座はその必要がなければ開設しないのが普通です。もし「投資してみたい」と興味を持った人は、まず口座だけでも開いてみるといいでしょう。インターネットで申し込めば簡単に手続きできます。

 一方で注意すべき点としては、投資経験のない人が「いまからでも70%増やせるかも!」と軽く考えているとしたら要注意だということです。

 3月12日付の「普通の会社員が投資でカモにならないための6カ条」でも指摘しましたが、人は投資するとき自信過剰に陥りやすく、適切な判断ができなくなることがよくあります。初心者ほど「自分に才能があるかもしれない」と過信しやすいのです。

 実際にチャレンジしてみると分かりますが、平静を保ちながら投資の判断をすることはなかなか大変です。相場の動きはあなたの思い通りにはならずイライラしますし、損を抱えた状態もしょっちゅう起きます。こうした状況に慣れていかなければ、無用の損失を積み重ねることにもなるのです。

 「まだチャンス」と楽観的に考えるだけでなく、「いまの上昇相場も今日がピークかも」と意識することが大切です。これから投資デビューするなら、最初は少額からのチャレンジにしておくといいでしょう。

■アベノミクス相場に乗れた人の3条件

 アベノミクス相場で資産を増やした人には3つの特徴があります。共通するキーワードは「上がる前」です。

(1)実際に投資し、上昇相場がきたときにすぐ乗れるようにしていた

 まず、株価が上昇基調になる前から投資にチャレンジしていた、ということです。もちろん株式投資には価格変動のリスクがあり、元本を割り込む可能性があります。それでも中長期的には相場が上昇に転じるタイミングがあると信じてお金を投じ、待つことができた人が今回のアベノミクス相場でも最初に笑うことができたわけです。とにかく「上がる前」から投資しておくことが重要です。

(2)お金をしっかりため、いつでも投資できる資金を用意していた

 次に、アベノミクス相場を迎える前に投資できるだけの資産を持っていた、ということです。どんな投資も、元手がなければお金を増やすことはできません。借金して投資をするのは論外ですから、投資にチャレンジするお金を「上がる前」に用意できることが、どんな相場に挑むにしても必要になります。

(3)投資について知識を学び、実際の投資を通じて成功・失敗体験をしていた

 最後に、投資への知識と経験がある状態で株価上昇局面に対応できたということです。未経験のままいきなり株式投資に挑むのはなかなか大変です。先ほど指摘した通り、目まぐるしく変動する株価をみて冷静さを保つのは大変ですし、投資判断のための知識も必要です。「上がる前」に勉強や経験をしておいてほしいのです。

 これら3つの特徴で分かるように、実は投資における勝負の半分以上は「上がる前」に決まっているといっても過言ではありません。楽しい人生とバラ色の老後に向けた資金づくりに投資を活用するためには、上がった後ではなく「上がる前」の準備を考える必要があります。

■上げ相場は人生で何度もやってくる

 「そんなことを言われても、もう遅い。いまの株高で手っ取り早くもうけたいんだ」という人も多いでしょう。しかし20~30代の読者の皆さんにとって重要なのは、相場の上昇は人生においてまだ何度もやってくるということです。今回ほど極端な上昇は少ないかもしれませんが、株式市場は上がったり下がったりを繰り返しながら、さながらヘビがのたうつように動いていきます。

 筆者は確定拠出年金(日本版401k)の投資教育が専門ですが、日本版401kがスタートしてから12年の間に日経平均の8000円割れが2回、1万5000円超えも2回ありました。それくらい株価の上下動は大きいのです。

 まだ投資したことがない人のために大まかなイメージでいえば、10年も投資をしていれば2回上下があるくらいの感覚です。つまり、いま30歳の人であれば「バラ色老後を迎えるまでに6回くらいは上昇相場がある」とゆったり構えておけばいいのです。

 これから投資する世代は「上がり続ける相場はない(いつかは下がる)」一方で、「下がり続ける相場はない(いつかは上がる)」ということを時間をかけて学んでいけばいいでしょう。

■投資もバラ色老後も中長期の目線で

 「上がる前」の準備をいまから始めておけば、アベノミクス相場の次にいつか株高の波が来たとき、その恩恵を逃すことはなくなります。これは、いまのアベノミクス相場に慌てて飛びついて失敗するより大事なことだと思います(ただし投資の経験はしておく方がいいので、いまは少額でチャレンジするとよいでしょう)。

 「次の上げ相場」を考えるなんて、ずいぶん遠い話のような気がします。しかし、それくらい中長期の目線を持てるようになれば、バラ色老後づくりにも役立つでしょう。

 もし、いまから投資をスタートするのであれば、3月26日付「バラ色老後へ初めての投資 積立投信で実践しよう」を参考にしてみてください。

 「アベノミクスがバラ色老後に与える影響」について考えてきた5月の最終回として、来週はインフレを取り上げます。アベノミクスが目指す政策の一つですが、40歳より若い人はインフレに対する実感がほとんどないと思います。バラ色老後に与える影響が深刻なインフレにどう向き合えばいいのか、対策を考えてみたいと思います。お楽しみに。

| | コメント (0)

揺らぐ「ボーイング王国」 日本の空、エアバス攻勢 日航の機体更新に照準

揺らぐ「ボーイング王国」
日本の空、エアバス攻勢 日航の機体更新に照準

2013/5/21付
日本経済新聞 朝刊

 米ボーイングのジム・マックナーニ最高経営責任者(CEO)が5月8日から3日間の日程で来日した。運航再開が決まったボーイング787型機の安全性について、世界で最も多く導入する日本で説明するのが目的だったが、隠れた理由がもう一つあった。日本の航空会社への納入を虎視眈々(たんたん)と狙う欧州航空機製造大手エアバスのけん制だ。

依存度に疑問

 「ミスター・イナモリに会えないか」。ボーイングはマックナーニCEOの来日に合わせて日本航空の稲盛和夫名誉会長との面会の可能性を探っていた。結局、スケジュールの調整がつかず、会談は実現しなかったが、3月末に日航取締役を退任した後も首脳陣の助言役として影響力を持つ稲盛氏へ接近しようとしたのはなぜか。

 昨年12月、エアバスのファブリス・ブレジエCEOが来日、稲盛氏と面会した。これをきっかけに日航はエアバスの大型旅客機A350の導入に向けて本格的な検討を開始。ボーイングはその動きに神経をとがらせた。

 日本の空は「ボーイング王国」といっても過言ではない。日航が運航する166機(リージョナル機を除く)はすべてボーイング製。全日本空輸も約9割がボーイング製だ。エアバスはボーイングのお膝元である米国ですら3割のシェアを持つにもかかわらず、日本では約1割にとどまる。

 稲盛氏は日航再建の過程でボーイング依存度の高さを疑問視していた。京セラを有力メーカーに育てた同氏にしてみれば、複数購買で調達コストを引き下げるのは常識。それは航空会社でも同じと考えたからだ。

 エアバスにはもう一つの追い風が吹いている。日航は現在、350~500人が乗れる大型機ボーイング777型機を46機保有する。保有年数の平均は8・9年だが、中には15年を超える機材もある。燃費性能などを考慮すると2~3年内に本格的な退役が始まる。

 ボーイングによる777型機の後継機納入開始は早くて19年。対するA350は14年にも納入が可能だ。エアバスには「日本市場を開拓するチャンスが訪れた」と映る。

日米連合を強調

 エアバスの攻勢は果敢だ。1月16日、相次ぐバッテリートラブルを受け米連邦航空局(FAA)は世界で飛ぶ787型機の運航停止を命じた。エアバスはすかさずA350へのリチウムイオン電池の搭載中止を発表し、安全性を強調した。

 3月28日にはブレジエCEOが安倍晋三首相を訪問。面会の名目はブレジエ氏自身が共同議長を務める「日欧ビジネス・ラウンドテーブル」の表敬挨拶だが、別れ際にこう言うことを忘れなかった。「エアバスは日本企業との取引を活性化していきます」

 787型機には三菱重工業、川崎重工業、富士重工業の3社で機体構造物の35%を担当。主翼や胴体に採用している炭素繊維と樹脂の複合材は東レが供給する。ブレジエCEOの発言は787型機生産の「日米連合」にくさびを打ち込んだようにも見える。部材メーカー幹部は「今後はエアバスの動きも考慮しなければならない」と語る。

 微妙な空気の変化を察知したのか、ボーイングのマックナーニCEOは来日中に日本経済新聞の取材で「(日本メーカーからの調達額を)年間40億ドルから同55億ドルに増やす」と発言。取引先や政府関係者との面会でも盛んに「メード・ウィズ・ジャパン」を強調した。

 エアバス製の航空機を購入するとなれば、専用の整備体制を構築したり、パイロットを養成したりする必要性が生じる。半面、そうした環境が整えば航空会社は中長期的にエアバス機を購入して初期投資を回収することになる。

 6月にはフランスのオランド大統領が来日、エアバス機の売り込みをかけてくることは確実視されている。日米関係を背景にボーイング偏重が続いてきた日本の航空機市場は大きく変わるのか。水面下の攻防は激しさを増している。

| | コメント (0)

厚年基金制度にようやくメス 年金村との暗闘なお

厚年基金制度にようやくメス 年金村との暗闘なお
 運用資産が27兆円に及ぶ厚生年金基金制度の大半をなくすことにつながる法案について大型連休明けにも国会審議が始まる。ずさんな運用の実態がAIJ投資顧問による詐欺事件をきっかけに発覚。年金制度への不信を断ち切るため厚生労働省は改革を急いだ。だが、多くの厚年基金に旧社会保険庁OBや信託銀行OBからなる「年金村」が存在し、現状を打破する壁として立ちはだかる。


厚労省は国民の年金不信を背に制度改革を急いだ
 「企業年金の課長を代えていただきたい」。4月下旬、自民党の厚労族の議員のもとに、ある厚年基金の常務理事が訪れた。改革法案の国会審議が近づく今もなお、手を替え品を替え抵抗する基金関係者は少なくない。法案の骨格は財政難の基金を5年で解散させ、残る基金も他の企業年金への移行を促す内容。厚生年金の保険料を全く関係がない基金が預かり、運用する仕組みは長年、欠陥があるといわれてきた。AIJ事件を機に厚労省はようやくメスを入れた。

 解散を決定済みのある基金に加入してきた企業の年金担当者は、基金事務局の給与実態に驚いた。基金の職員は計7人。常務理事は年収1446万円(2010年度)で、退職金が1900万円。事務長は年収1119万円だった。ほかの5人の女性職員のうち多い人で年収830万円をもらっていた。加入企業の担当者は「全員午前9時から午後5時の勤務。我々、加入企業の残業を含めた年収の1.5倍以上はもらっていた」とため息をつく。常務理事と事務長は旧社保庁のOBだった。長年、給与実態は開示されず、解散を進める過程で明らかになったという。

 AIJ事件では基金関係者への接待攻勢も問題になった。天下りした旧社保庁や地方厚生局のOBと運用委託をうけた信託銀行などの金融機関が密接なつながりをもつ。専門的な年金の知識に乏しい加入企業が入り込めない「年金村」ができあがった。厚労省もOBらとのあつれきを恐れ、見て見ぬふりをしてきた経緯がある。

 動きの鈍かった厚労省が今回あえて踏み込んだ理由は国民の年金不信が高まりだ。2011年度の国民年金保険料の納付率は58.6%で過去最低。特に若い層ほど顕著で、25~29歳は46.1%にとどまった。30~34歳は49.6%と、初めて50%を割り込んだ。納付率の低下が続けば制度の維持が難しくなる。「ここで解決できなかったときの世論の批判リスクの方が年金村より怖い」と政務三役の1人は語る。

 厚労省は民主党政権下の昨年11月、厚年基金の全面廃止を柱とする試案を発表した。一方、自民党は昨夏に佐藤ゆかり参院議員のもとで、手元にある資産だけを返せばいい「あるだけ解散」を基金に認める案を公表。存続を望む基金関係者は自民党政権に期待を寄せていた。実際は政権交代後も1割程度の基金の存続を認める半面、それ以外の生き残りの道をほぼ閉ざす厳しい中身となった。

 厚年基金の思惑に沿った骨抜きを避けるため、厚労省は政権交代前から周到に根回しを進めていた。年金局は自民党の大物議員とひそかに厚年基金の勉強会を始動。このメンバーが現官房副長官の加藤勝信氏、厚労関係の大物議員である宮沢洋一氏、そして現厚生労働相の田村憲久氏の3人だった。夏の自民党の「あるだけ解散」試案から大きく修正。国会に提出した現在の法案とほとんど変わらない原案をまとめていた。

 それでもまだ年金村が踏ん張る余地はあるとの声も根強い。法案を施行した場合、5年後以降から存続基金は基準を満たすことが求められる。毎年度末に国に返さなければいけない資産の1.5倍以上の資産を持つなどの基準を満たすことが必要としたが、下回った基金には厚労相が第三者機関の意見を聴いて解散命令を発動「できる」とした。

 問題は「できる」とした表現が抜かずの宝刀になる恐れだ。今でも3期連続で積立金が必要額の9割を下回るなどの基準に該当した「危機的状況の基金」に厚労相が解散命令を発動できる規定がある。実際は1度も発動したことがない。

 基金解散を土壇場で避ける抜け道になるのか。その疑いを裏づけるかのように「5年後の政治的判断の余地は残っている」とみる基金関係者は少なくない。基金の廃止で迷惑を被る年金受給者の思いをよそに、水面下の駆け引きは続く。

| | コメント (0)

厚年基金制度にようやくメス 年金村との暗闘なお

厚年基金制度にようやくメス 年金村との暗闘なお
 運用資産が27兆円に及ぶ厚生年金基金制度の大半をなくすことにつながる法案について大型連休明けにも国会審議が始まる。ずさんな運用の実態がAIJ投資顧問による詐欺事件をきっかけに発覚。年金制度への不信を断ち切るため厚生労働省は改革を急いだ。だが、多くの厚年基金に旧社会保険庁OBや信託銀行OBからなる「年金村」が存在し、現状を打破する壁として立ちはだかる。


厚労省は国民の年金不信を背に制度改革を急いだ
 「企業年金の課長を代えていただきたい」。4月下旬、自民党の厚労族の議員のもとに、ある厚年基金の常務理事が訪れた。改革法案の国会審議が近づく今もなお、手を替え品を替え抵抗する基金関係者は少なくない。法案の骨格は財政難の基金を5年で解散させ、残る基金も他の企業年金への移行を促す内容。厚生年金の保険料を全く関係がない基金が預かり、運用する仕組みは長年、欠陥があるといわれてきた。AIJ事件を機に厚労省はようやくメスを入れた。

 解散を決定済みのある基金に加入してきた企業の年金担当者は、基金事務局の給与実態に驚いた。基金の職員は計7人。常務理事は年収1446万円(2010年度)で、退職金が1900万円。事務長は年収1119万円だった。ほかの5人の女性職員のうち多い人で年収830万円をもらっていた。加入企業の担当者は「全員午前9時から午後5時の勤務。我々、加入企業の残業を含めた年収の1.5倍以上はもらっていた」とため息をつく。常務理事と事務長は旧社保庁のOBだった。長年、給与実態は開示されず、解散を進める過程で明らかになったという。

 AIJ事件では基金関係者への接待攻勢も問題になった。天下りした旧社保庁や地方厚生局のOBと運用委託をうけた信託銀行などの金融機関が密接なつながりをもつ。専門的な年金の知識に乏しい加入企業が入り込めない「年金村」ができあがった。厚労省もOBらとのあつれきを恐れ、見て見ぬふりをしてきた経緯がある。

 動きの鈍かった厚労省が今回あえて踏み込んだ理由は国民の年金不信が高まりだ。2011年度の国民年金保険料の納付率は58.6%で過去最低。特に若い層ほど顕著で、25~29歳は46.1%にとどまった。30~34歳は49.6%と、初めて50%を割り込んだ。納付率の低下が続けば制度の維持が難しくなる。「ここで解決できなかったときの世論の批判リスクの方が年金村より怖い」と政務三役の1人は語る。

 厚労省は民主党政権下の昨年11月、厚年基金の全面廃止を柱とする試案を発表した。一方、自民党は昨夏に佐藤ゆかり参院議員のもとで、手元にある資産だけを返せばいい「あるだけ解散」を基金に認める案を公表。存続を望む基金関係者は自民党政権に期待を寄せていた。実際は政権交代後も1割程度の基金の存続を認める半面、それ以外の生き残りの道をほぼ閉ざす厳しい中身となった。

 厚年基金の思惑に沿った骨抜きを避けるため、厚労省は政権交代前から周到に根回しを進めていた。年金局は自民党の大物議員とひそかに厚年基金の勉強会を始動。このメンバーが現官房副長官の加藤勝信氏、厚労関係の大物議員である宮沢洋一氏、そして現厚生労働相の田村憲久氏の3人だった。夏の自民党の「あるだけ解散」試案から大きく修正。国会に提出した現在の法案とほとんど変わらない原案をまとめていた。

 それでもまだ年金村が踏ん張る余地はあるとの声も根強い。法案を施行した場合、5年後以降から存続基金は基準を満たすことが求められる。毎年度末に国に返さなければいけない資産の1.5倍以上の資産を持つなどの基準を満たすことが必要としたが、下回った基金には厚労相が第三者機関の意見を聴いて解散命令を発動「できる」とした。

 問題は「できる」とした表現が抜かずの宝刀になる恐れだ。今でも3期連続で積立金が必要額の9割を下回るなどの基準に該当した「危機的状況の基金」に厚労相が解散命令を発動できる規定がある。実際は1度も発動したことがない。

 基金解散を土壇場で避ける抜け道になるのか。その疑いを裏づけるかのように「5年後の政治的判断の余地は残っている」とみる基金関係者は少なくない。基金の廃止で迷惑を被る年金受給者の思いをよそに、水面下の駆け引きは続く。

| | コメント (0)

« 2013年4月 | トップページ | 2013年6月 »