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揺らぐ「ボーイング王国」 日本の空、エアバス攻勢 日航の機体更新に照準

揺らぐ「ボーイング王国」
日本の空、エアバス攻勢 日航の機体更新に照準

2013/5/21付
日本経済新聞 朝刊

 米ボーイングのジム・マックナーニ最高経営責任者(CEO)が5月8日から3日間の日程で来日した。運航再開が決まったボーイング787型機の安全性について、世界で最も多く導入する日本で説明するのが目的だったが、隠れた理由がもう一つあった。日本の航空会社への納入を虎視眈々(たんたん)と狙う欧州航空機製造大手エアバスのけん制だ。

依存度に疑問

 「ミスター・イナモリに会えないか」。ボーイングはマックナーニCEOの来日に合わせて日本航空の稲盛和夫名誉会長との面会の可能性を探っていた。結局、スケジュールの調整がつかず、会談は実現しなかったが、3月末に日航取締役を退任した後も首脳陣の助言役として影響力を持つ稲盛氏へ接近しようとしたのはなぜか。

 昨年12月、エアバスのファブリス・ブレジエCEOが来日、稲盛氏と面会した。これをきっかけに日航はエアバスの大型旅客機A350の導入に向けて本格的な検討を開始。ボーイングはその動きに神経をとがらせた。

 日本の空は「ボーイング王国」といっても過言ではない。日航が運航する166機(リージョナル機を除く)はすべてボーイング製。全日本空輸も約9割がボーイング製だ。エアバスはボーイングのお膝元である米国ですら3割のシェアを持つにもかかわらず、日本では約1割にとどまる。

 稲盛氏は日航再建の過程でボーイング依存度の高さを疑問視していた。京セラを有力メーカーに育てた同氏にしてみれば、複数購買で調達コストを引き下げるのは常識。それは航空会社でも同じと考えたからだ。

 エアバスにはもう一つの追い風が吹いている。日航は現在、350~500人が乗れる大型機ボーイング777型機を46機保有する。保有年数の平均は8・9年だが、中には15年を超える機材もある。燃費性能などを考慮すると2~3年内に本格的な退役が始まる。

 ボーイングによる777型機の後継機納入開始は早くて19年。対するA350は14年にも納入が可能だ。エアバスには「日本市場を開拓するチャンスが訪れた」と映る。

日米連合を強調

 エアバスの攻勢は果敢だ。1月16日、相次ぐバッテリートラブルを受け米連邦航空局(FAA)は世界で飛ぶ787型機の運航停止を命じた。エアバスはすかさずA350へのリチウムイオン電池の搭載中止を発表し、安全性を強調した。

 3月28日にはブレジエCEOが安倍晋三首相を訪問。面会の名目はブレジエ氏自身が共同議長を務める「日欧ビジネス・ラウンドテーブル」の表敬挨拶だが、別れ際にこう言うことを忘れなかった。「エアバスは日本企業との取引を活性化していきます」

 787型機には三菱重工業、川崎重工業、富士重工業の3社で機体構造物の35%を担当。主翼や胴体に採用している炭素繊維と樹脂の複合材は東レが供給する。ブレジエCEOの発言は787型機生産の「日米連合」にくさびを打ち込んだようにも見える。部材メーカー幹部は「今後はエアバスの動きも考慮しなければならない」と語る。

 微妙な空気の変化を察知したのか、ボーイングのマックナーニCEOは来日中に日本経済新聞の取材で「(日本メーカーからの調達額を)年間40億ドルから同55億ドルに増やす」と発言。取引先や政府関係者との面会でも盛んに「メード・ウィズ・ジャパン」を強調した。

 エアバス製の航空機を購入するとなれば、専用の整備体制を構築したり、パイロットを養成したりする必要性が生じる。半面、そうした環境が整えば航空会社は中長期的にエアバス機を購入して初期投資を回収することになる。

 6月にはフランスのオランド大統領が来日、エアバス機の売り込みをかけてくることは確実視されている。日米関係を背景にボーイング偏重が続いてきた日本の航空機市場は大きく変わるのか。水面下の攻防は激しさを増している。

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