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厚年基金制度にようやくメス 年金村との暗闘なお

厚年基金制度にようやくメス 年金村との暗闘なお
 運用資産が27兆円に及ぶ厚生年金基金制度の大半をなくすことにつながる法案について大型連休明けにも国会審議が始まる。ずさんな運用の実態がAIJ投資顧問による詐欺事件をきっかけに発覚。年金制度への不信を断ち切るため厚生労働省は改革を急いだ。だが、多くの厚年基金に旧社会保険庁OBや信託銀行OBからなる「年金村」が存在し、現状を打破する壁として立ちはだかる。


厚労省は国民の年金不信を背に制度改革を急いだ
 「企業年金の課長を代えていただきたい」。4月下旬、自民党の厚労族の議員のもとに、ある厚年基金の常務理事が訪れた。改革法案の国会審議が近づく今もなお、手を替え品を替え抵抗する基金関係者は少なくない。法案の骨格は財政難の基金を5年で解散させ、残る基金も他の企業年金への移行を促す内容。厚生年金の保険料を全く関係がない基金が預かり、運用する仕組みは長年、欠陥があるといわれてきた。AIJ事件を機に厚労省はようやくメスを入れた。

 解散を決定済みのある基金に加入してきた企業の年金担当者は、基金事務局の給与実態に驚いた。基金の職員は計7人。常務理事は年収1446万円(2010年度)で、退職金が1900万円。事務長は年収1119万円だった。ほかの5人の女性職員のうち多い人で年収830万円をもらっていた。加入企業の担当者は「全員午前9時から午後5時の勤務。我々、加入企業の残業を含めた年収の1.5倍以上はもらっていた」とため息をつく。常務理事と事務長は旧社保庁のOBだった。長年、給与実態は開示されず、解散を進める過程で明らかになったという。

 AIJ事件では基金関係者への接待攻勢も問題になった。天下りした旧社保庁や地方厚生局のOBと運用委託をうけた信託銀行などの金融機関が密接なつながりをもつ。専門的な年金の知識に乏しい加入企業が入り込めない「年金村」ができあがった。厚労省もOBらとのあつれきを恐れ、見て見ぬふりをしてきた経緯がある。

 動きの鈍かった厚労省が今回あえて踏み込んだ理由は国民の年金不信が高まりだ。2011年度の国民年金保険料の納付率は58.6%で過去最低。特に若い層ほど顕著で、25~29歳は46.1%にとどまった。30~34歳は49.6%と、初めて50%を割り込んだ。納付率の低下が続けば制度の維持が難しくなる。「ここで解決できなかったときの世論の批判リスクの方が年金村より怖い」と政務三役の1人は語る。

 厚労省は民主党政権下の昨年11月、厚年基金の全面廃止を柱とする試案を発表した。一方、自民党は昨夏に佐藤ゆかり参院議員のもとで、手元にある資産だけを返せばいい「あるだけ解散」を基金に認める案を公表。存続を望む基金関係者は自民党政権に期待を寄せていた。実際は政権交代後も1割程度の基金の存続を認める半面、それ以外の生き残りの道をほぼ閉ざす厳しい中身となった。

 厚年基金の思惑に沿った骨抜きを避けるため、厚労省は政権交代前から周到に根回しを進めていた。年金局は自民党の大物議員とひそかに厚年基金の勉強会を始動。このメンバーが現官房副長官の加藤勝信氏、厚労関係の大物議員である宮沢洋一氏、そして現厚生労働相の田村憲久氏の3人だった。夏の自民党の「あるだけ解散」試案から大きく修正。国会に提出した現在の法案とほとんど変わらない原案をまとめていた。

 それでもまだ年金村が踏ん張る余地はあるとの声も根強い。法案を施行した場合、5年後以降から存続基金は基準を満たすことが求められる。毎年度末に国に返さなければいけない資産の1.5倍以上の資産を持つなどの基準を満たすことが必要としたが、下回った基金には厚労相が第三者機関の意見を聴いて解散命令を発動「できる」とした。

 問題は「できる」とした表現が抜かずの宝刀になる恐れだ。今でも3期連続で積立金が必要額の9割を下回るなどの基準に該当した「危機的状況の基金」に厚労相が解散命令を発動できる規定がある。実際は1度も発動したことがない。

 基金解散を土壇場で避ける抜け道になるのか。その疑いを裏づけるかのように「5年後の政治的判断の余地は残っている」とみる基金関係者は少なくない。基金の廃止で迷惑を被る年金受給者の思いをよそに、水面下の駆け引きは続く。

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