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2013年10月

敗れたのはロシア シリア化学兵器問題の裏側

敗れたのはロシア シリア化学兵器問題の裏側

2013/10/24 7:00

 内戦化のシリアで化学兵器の解体作業が進んでいる。8月にシリア軍によるとされる大規模な化学兵器攻撃が確認され、米国のオバマ政権が制裁のため武力行使の構えを見せたが、シリアのアサド政権が化学兵器放棄を表明。武力衝突の回避は、仲介したロシアの外交的勝利ともいわれた。しかし、公開情報やインテリジェンス(情報)関係者らの証言をつなぎ合わせていくと、ロシアとシリアがつくる事実上の「化学兵器共同体」を米国が締めあげ、遂に降参させたという構図が見えてくる。

■事実上シリアに化学兵器開発を代行させたロシア

「シリアからロシア製の化学兵器が見つかっても私はまったく驚かない」――。昨年9月28日にネット上でこう語ったのは、旧ソ連とロシアの化学兵器研究機関で26年間働き、今は亡命先の米国で暮らすフィル・ミルザヤノフ氏だ。同氏によると、シリアは冷戦時代から自国軍人を旧ソ連の軍化学アカデミーなどに留学させて化学戦の技法を習得。冷戦後もロシアはシリアの化学兵器研究機関に物資や機材を提供していた。「1997年の化学兵器禁止条約の発効後、ロシアは事実上シリアに化学兵器開発を代行させてきた」(国際軍事情報筋)

 米国のオバマ政権もそうした状況を熟知し、ロシアに対し、シリアとの化学兵器協力を手じまいするよう今年春ごろから強く迫っていたが、ロシアの腰は重かった。

 オバマ政権は並行して、シリアの隣国ヨルダンなどに中央情報局(CIA)要員や海兵隊を送り、シリア軍の部隊の動向を探るなど攻撃準備を進めた。8月から9月初旬にかけて、米欧の一般紙や軍事専門誌に「米軍のシリア攻撃の規模は予想以上に大きそうだ」「米軍は化学兵器保管庫を攻撃しても有毒ガスの流出を抑えられるADWという新兵器を開発した」など、シリアやロシアを心理的に揺さぶる記事が相次いで出た。

 シリアが化学兵器放棄を表明したのはその後間もなくだった。仮に攻撃があればシリアとの化学兵器協力が明らかになり、ロシアはメンツを失っていた。「今、ロシアはシリアでの活動の痕跡を消すため関連物資の運び出しを急いでいる」と別の国際情報筋は語る。

■オバマ流のステルス軍事作戦

 長年続いてきたロシアとシリアの化学兵器共同体を一発のミサイルも撃たずに解体に追い込んだオバマ氏の手法はなかなかにしたたかだ。2011年に国際テロ組織アルカイダのビン・ラディン容疑者を発見・殺害したように、大規模な軍部隊は投入せず、情報機関や特殊部隊を静かに動かして目的を達成する「ステルス(見えにくい)軍事作戦」がオバマ流なのだ。

 オバマ政権が先に武力行使断念を発表し、その後でシリアが化学兵器放棄を公表する順になったため「ロシアの仲介外交が成功した」という印象を与えた。オバマ氏がロシアとシリアの化学兵器協力の詳細を暴露せず、あえてロシアに花を持たせたのはなぜか。

 実は2014年末のアフガニスタン撤退を控える米軍の最大の問題は、軍事作戦開始以降12年間に積み上がった膨大な軍の装備品(車両だけでも5万台以上)をいかに米国に戻すかなのだという。パキスタン経由の南ルートは問題が多く、中央アジア諸国とロシアを経由した北ルートを活用したい。「核なき世界」を掲げてノーベル平和賞を受賞し、任期8年間の集大成として2016年に米国で再度「核セキュリティー・サミット」の開催を目指すオバマ氏としては、ロシアとの新たな合意で戦術核兵器などの削減も達成したい。いずれにしても、米国嫌いで有名なプーチン大統領との関係を少しでも良くしておくに越したことはないのだ。

 シリア化学兵器問題をめぐっては、ロシアは「勝者」からほど遠く、米国が「敗者」になったわけでもない。

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羽田国際線枠配分でもANAに軍配 国交省の不透明試算でJAL成田便にも打撃

羽田国際線枠配分でもANAに軍配 国交省の不透明試算でJAL成田便にも打撃

 日本航空(JAL)には、極めて厳しい結果となった。来年3月の羽田空港国際線の発着枠増に伴う配分で、国土交通省は、国内航空会社に割り当てる16枠のうち、全日本空輸(ANA)に11枠、JALに5枠を配分することを決めた。

 都心に近く便利な羽田空港の発着枠は“ドル箱”であり、どのように配分されるか関係者の注目を集めていたが、ふたを開けてみると11対5の大差。「ANAとJALの間で2~3枠差の傾斜はあると思っていたが、まさかここまで大きいとは。日本の航空行政は変わった」と驚きの声が上がっている。 国交省の説明は、「公的支援によって再生したJALとANAとの間で大きな体力差がじており、このまま放っておくと競争環境に歪みが生じかねない」というもので、ANAや自民党の主張に沿う形となった。

 国交省の試算は次のようなものだ。

 JALが更生法を適用したことによって免除される税金は、今後6年間にわたり約2000億円が見込まれる。一方で羽田の国際線の発着枠は、1枠で年間約10億円の利益をもたらすとされる。

 今回は6枠差であるから、1年間でANAとJALの間で生じる利益の差は60億円。10年間で600億円、20年間だと1200億円になり、今回の傾斜配分をもって「格差がある程度是正される」(平岡成哲・国交省航空事業課長)というものだ。

●格差是正はいつまで続く
 しかし、この試算を眺めれば眺めるほど、あまりにもどんぶり勘定と言わざるを得ない。

 そもそも、国際線の枠は、国内線の枠と違って回収再配分がなされない。企業のゴーイングコンサーン(永続性)を前提にすれば、今回の枠の配分は100年間でも続くものだ。

 もう一つが、増枠によるプラス面しか見ていないことである。供給量の増加は、航空会社にとって競合の激化を意味する。成田に乗り入れている外資系航空会社は「また厳しい時代がやってきた」とこぼす。

 今回、ANAだけに羽田枠が配分され、JALにゼロ配分だったのは、ドイツ、ベトナム、インドネシア、フィリピン、カナダの5ヵ国だ。いずれの国へもJALは成田から便を飛ばしているが、「都心に近い羽田に新路線ができれば、地理的に不利な成田路線は競争力を失う」(航空関係者)。

 さらに厄介なのは、通称“成田縛り”と呼ばれるルールで、羽田から路線を開設しても同じ国への成田路線は残さなければならないというものだ。例えば、現在、東京(成田、羽田)―独フランクフルト便は、JAL、ANA、独ルフトハンザの3社あわせて1日5便だが、来年の3月以降は7~9便が飛ぶことになる。

 供給過剰の中で苦戦し、真っ先に路線撤退に追い込まれることになるのは、JALの成田便とみられている。

 こうした点をつぶさに見ていくと、今回の傾斜配分でJALが被る“損害”は1200億円に、とどまらないだろう。 問題なのは、今回の枠配分に関する説明でも、JALへの公的支援による格差是正問題をいつまで論点にするつもりなのか、国交省が時期を明確に示さなかったことだ。航空行政に必要なのは、明確な市場ルールを設けることであり、政治の顔色を見ながら場当たり的に対応することではない。

 今回の枠配分決定を受け、JALは当局に対する反発の姿勢を示した。国交省に対して「民間企業の自由な活動を制限するもの。合理的な説明と結果の是正を求める」としている。仮に行政訴訟などに発展したとしても、「ある程度のJALの反発は予想していた。もしそうなったら、受けて立つしかない」(航空局幹部)と、早くもJALと国交省の間には緊張感が漂う。

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