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忍び寄る相続税貧乏 「遺産=不動産」なら要注意

忍び寄る相続税貧乏 「遺産=不動産」なら要注意
相続トラブル百科 実践編第85回

2014/1/24 7:00

 相続税増税のスタートまでいよいよ残り1年を切りました。原則として相続税は、現金で納付する必要があります。増税が現実のものとなれば、相続人は「より多くの現金」を準備しなければなりません。

 相続増税の影響を受ける層は、従来に比べて幅広く分布すると予測されます。影響の規模は遺産総額に応じて異なりますが、新制度で課される相続税額が旧制度の税額より大幅に増えるケースは少なくないでしょう。

 大きなインパクトを受けるのは、これまで相続税の基礎控除額の標準だった8000万円を超え、1億円をいくらか上回る遺産額を継承する家庭だといわれています。この層では大みそかから2015年に変わる午前0時をまたぐと、かかってくる相続税が一気に2倍、3倍、あるいはそれ以上に膨れ上がるケースが出てくるかもしれません。

■納税資金を相続人の懐から… 都市部の住宅街でありがち

 遺産に現金や換金しやすい有価証券が十分に含まれていれば、瞬間的に膨れ上がる負担に耐えることができるでしょう。しかし、都市部の住宅街にありがちな「自宅のマンション1つ、あとは現金が少し」といったケースでは、納税資金を遺産からではなく、相続人自身の懐から出さなければなりません。

 現実の話として、現金が少ない事態は十分に予想されます。国税庁の資料で相続税の申告状況などをみると、いかに不動産が遺産の中で高い割合を占めているかが分かります。例えば11年に起こった相続の場合、土地と家屋を合わせた割合が財産全体の50%以上を占めています。この数字はあくまで「平均値」です。それでも「半分以上が不動産」ですから、8割、9割が不動産だという家庭も存在するでしょう。

 さらに相続税が課せられるほどの遺産が残る状況でも、受け取る側の事情は一様ではありません。「自宅の新築やリノベーションを終えたばかり」「子どもの教育ローンのまとまった返済がある」「今まで果たせなかった念願の長期海外クルーズに出かける」など、大きな資金需要の発生時期にさしかかることがあります。

 そこに不動産だけが降ってくる相続が起きると、納税のためのお金を自己資金で賄うことが難しくなります。手元資金が不足し、たちまち「相続税貧乏」になってしまう恐れが現実味を増すといえるでしょう。

 もちろん「不動産を売却して現金化すればいいじゃないか」という解決方法が考えられます。しかし、不動産売却は周囲の市況に大きく左右されるので、それほど簡単ではありません。

 増税はあるひとつの家庭だけに起こるのではなく、同じような目にあう家庭が多発的に出てくるということです。人口減少や住宅の過剰供給傾向と相まって、「不動産を売りたい人」が増えると、地域によってはますます不動産価格に下落圧力がかかりかねません。市況のバランスが崩れ、相続人が納得する売値では買い手がつきにくいという悪循環になります。

■相続した不動産の売却には経費が必要

 そもそも、不動産が売却できたとしても「売却金額=手取り額」ではありません。すべてが手元に残るわけではないのです。相続した不動産の売却には、いろいろな経費が必要なことも念頭に置く必要があるでしょう。

 たとえば故人名義の不動産は、売却前に自分名義に変えておかなければなりません。名義書き換えに必要な登録免許税や、司法書士に依頼した場合の手数料などがかかります。また、仲介した不動産業者に対し、成約金額の3%程度の手数料を支払う必要があるでしょう。土地売却ならば測量して境界を画定しておかないと売れない場合があり、その費用もかなりの金額です。

 それだけにはとどまりません。場合によっては、売却金額から不動産の取得金額を差し引いた「値上がり益」、つまり「譲渡益」に対して「譲渡所得税」がかかることがあります。この税率が20%、ケースによっては39%に達することがあります。意外に大きな数字なので気をつけなければならないでしょう。

 ただ、本来は「相続税を支払うため」の遺産売却ですから、さらに傷口に塩を塗るかのように「譲渡所得税が課税される」のは酷な話かもしれません。そのため相続の場合には特例が設けられています。従来なら遺産の不動産を売却して相続税の支払いにあてた場合、「譲渡所得税は課税されない」もしくは「大幅に少なくなるケース」が多くありました。

■相続税支払いの特例取り扱い、大幅変更なら実質増税に

 しかし最新の税制改正の試案には、この特例の取り扱いを大幅に変更する動きが含まれています。今後は、この部分で実質増税の可能性があることは見逃せないように思います。

 相続した不動産の売却には、予想以上の苦戦や負担増が見込まれます。相続人としては、ためらいながらも「とりあえずの様子見」を余儀なくされてしまい、自分の懐から納税しなければならない状況に追い込まれ、最終的に「相続税貧乏」となる可能性が残ります。

 来年からの相続増税への備えという意味では、従前より現金や換金性の高い資産の重要性がかなり増していることがわかります。増税の影響が大きい家庭では、「キャッシュをどう準備するか」が、より問われる局面になることは間違いありません。このトピックについては、また別稿でもとりあげてみたいと思います。

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