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無人機ビジネスに死角 軍事転用、リスク増 (真相深層)

無人機ビジネスに死角 軍事転用、リスク増 (真相深層)

 対テロ戦争で開発が進んだ無人機を民間利用する動きが加速してきた。新たなビジネスの可能性が広がる半面、軍事転用リスクも世界に拡散する。革新をもたらすとされる無人機ビジネスに死角はないのか。

米グーグルの買収先が開発中の無人機(完成予想図)=AP

米グーグルの買収先が開発中の無人機(完成予想図)=AP

 「重要な一歩だ」。10日、フォックス米運輸長官は米連邦航空局(FAA)が同日発表した飛行計画の認可に歓迎の声明を出した。英石油大手BPなどがアラスカ州内の油田設備の調査を目的に無人機を飛ばす計画。米国内で無人機の民間利用が認可されたのは、これが初めてだ。

 今年4月には、米グーグルが無人機ベンチャーの米タイタン・エアロスペース(ニューメキシコ州)を買収。翼に搭載した太陽電池パネルで発電しながら、高度約2万メートルの上空を5年間飛び続けられる無人機を使って、通信サービスなどを提供する技術の本格的な検討に入った。

豪・中企業が主導

 米アマゾン・ドット・コムなども参入を急ぐ無人機ビジネス。だが配送などの商業化で先行するのは米国勢ではない。オーストラリアと中国の企業だ。

 豪シドニーを拠点とする教科書販売・レンタルのズーカルは、6つのプロペラで飛ぶ小型無人機での配送サービスを始める。スマートフォン(スマホ)で注文を受け、全地球測位システム(GPS)を使って、顧客のスマホに向けて無人機を飛ばす仕組みだ。中国の宅配大手、順豊エクスプレスも過疎地への配送の試行を始めた。

 豪政府は無人機ビジネスをいち早く解禁。軍用無人機の開発を進める中国政府は商用の開発も後押しする。日本では20年にわたり農薬散布に無人ヘリが使われてきた。

 これに対し、米国は軍用以外の無人機利用を警察や消防、学術研究などに制限してきた。FAAは2015年9月を目標に無人機飛行のルール作りを進めているが、対応は慎重だ。無人機の開発を主導した米国が民間利用に二の足を踏むのはなぜか。

 「急速に発達する民間技術を手に入れて攻撃能力を高める敵に対抗するシステムの提案を求む」――。米国防総省の国防高等研究計画局(DARPA)。プレデターなど米軍の無人機の開発を推進した部局が2月、こんな募集を出した。

 DARPAが構築を急ぐのは、無人機と有人機を組み合わせた防衛体制。アフガニスタンなどで展開した遠隔操作の無人機によるテロリストの監視や空爆だけでなく、空中戦も想定する。無人機攻撃の脅威に、無人機技術の一段の向上で対応する構えだ。

韓国領の島に墜落していた小型無人機と搭載していたニコン製カメラ(韓国国防省提供)=共同

韓国領の島に墜落していた小型無人機と搭載していたニコン製カメラ(韓国国防省提供)=共同

 米軍が独占してきた無人機の技術は急速に拡散した。インターネットサイト「UAVGlobal」には、100ドル(約1万円)程度で手に入る趣味用の小型機から、数百万ドルの軍用無人機を製造する企業がリストアップされている。その数は50カ国以上、409社にのぼる。

日本製品使う?

 3月から4月にかけ、北朝鮮が飛ばしたとみられる無人機が発見された事件。韓国の軍施設などを撮影していたとされる無人機のエンジンやセンサーは日本製の市販品の疑いがある。大阪府の模型エンジンメーカーは「映像を見るかぎり、弊社の製品の可能性がある」と認める。

 技術を悪用するのは国家とは限らない。昨年6月、ドイツで無人機によるテロ計画が発覚した。容疑者はGPSで誘導する無人機システムの開発を研究する2人のチュニジア系学生だった。

 米政府がテロ組織に指定するレバノンの民兵組織ヒズボラは空軍を持たないが、数百の無人機を保有するとされる。米軍はこうしたテロ組織や敵対国から無人機攻撃を受けるリスクを数年前から深刻に受け止め、対応策を練ってきた。

 「軍が開発したコンピューターやインターネットは民間技術で一段と発展し、軍事に改めて応用された。無人機も同じ流れにある」。米ブルッキングス研究所のピーター・シンガー上級研究員は指摘する。

 米国が直面するのは、対テロ戦争で兵が殺されないようにするために開発した無人機が新たなテロを生むジレンマだ。開発競争の行き着く先は、自ら人を殺す判断を下すロボット無人機なのか。規制論は国際的に熱を帯びてきた。日本も無縁ではいられない。

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