« ホテルマン文化をぶちこわせ | トップページ | 無人機ビジネスに死角 軍事転用、リスク増 (真相深層) »

ANA飛ばずに稼ぐ タイで機長育成

 ANAホールディングス(HD)が新たな収益源の育成に乗り出す。アジアのパイロット不足に着目し、2014年度中にタイに乗員養成拠点を開設するほか、15年度には沖縄で航空機整備事業を始める。狙いは需要の伸びる格安航空会社(LCC)だ。国際線の強化と同時に「飛ばずに稼げる」事業を増やし、経営基盤を安定させる。

 「運航コストが海外航空会社より高い。どう考えるか」。ANAHDが23日に開いた株主総会。ある株主は経営陣に厳しい質問を投げかけた。

 座席数と飛行距離を掛けた国際線の運航規模で4月、日本航空を逆転したANA。逆転は全日本空輸が1986年に国際線に参入して初めてだが、経営陣に浮かれた様子はない。円安に伴う燃油費上昇で14年3月期の営業利益は659億円と前の期比36%減少。一昨年実施した約1700億円の増資も響き、株価も上昇力を欠いたままだ。

 収益力向上の解決策として伊東信一郎社長が掲げるのが、アジアの航空市場の成長力の取り込みだ。23日の株主総会でも、片野坂真哉副社長は増資で調達した1700億円の資金の使途について「航空事業とシナジーの高い分野を中心に、アジアの戦略的な投資に活用する」と説明した。

 試金石と位置付けるのが乗員養成事業だ。

 関係者によると、ANAは乗員養成学科を持つタイのアサンプション大学と組み、今年度中にバンコク市内にパイロットの養成施設を開設する。LCCに人気の欧エアバスの小型機「A320」のフライトシミュレーターを導入。同大学の訓練に加えアジアのLCCから訓練需要を取り込む。

 「アジアではますますパイロット需要が増す。ニーズは大きい」と幹部は話す。アジアでは30年に今の4.5倍の23万人のパイロットが必要とされ、深刻な人材不足が懸念されている。ANAは先手を打って昨夏、パイロット養成会社の米パンナムを約130億円で買収しており、タイにもノウハウを注入する。

 強化するのはパイロット養成だけではない。

 「オキナワをアジア展開の核にする」。沖縄をアジアの貨物ネットワークのハブ(中核拠点)に位置付けるANAは、新規参入する航空機整備受託事業でも沖縄を拠点にすることを決めた。15年度の事業開始を見据え、航空機整備の新会社を設立。300人近い技術者を集め、エンジン分解などの「重整備」も行う。グループ外から整備を受託するのは初めてだ。

 新規事業強化で、同社がベンチマークとするのは独ルフトハンザ航空だ。ルフトハンザはパイロット養成や整備を幅広く手掛け、航空業界で多角化の成功モデルとされる。13年も非航空部門が利益の過半を稼いだ。

 ANAは2月にまとめた3カ年中期経営計画で、16年度までに国際線の運航規模を45%増やす方針を掲げており、国際線依存度が高まる見通し。テロや災害リスクに備えるため、LCC普及で先行する欧州市場を見習い「フルサービスキャリア」として生き残る考え。

 ただ、ANAの場合、非航空事業の利益はまだ全体の1割強。当面は売上高の9割近くを占める航空事業が収益の柱であることには変わりがない。足元では傘下のLCCがパイロット不足で相次いで減便に追い込まれており、グループ内部の足場固めも必要だ。ANAがアジア航空業界の盟主の座を射止めるには、成長に向けた戦略投資と既存事業の収益改善の両立が求められる。

|

« ホテルマン文化をぶちこわせ | トップページ | 無人機ビジネスに死角 軍事転用、リスク増 (真相深層) »