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2014年7月

旬のサンマが届かない…トラック新規制の衝撃

旬のサンマが届かない…トラック新規制の衝撃

 北海道のサンマが西日本に、九州のレタスが東日本に届かない――。こんな事態が現実味を帯びてきた。原因は今年1月から適用されているトラックの新規制。安全を確保し過重労働からドライバーを救うはずの規制なのだが、逆に、高いハードルを越えられない中小零細の運送業者を「仕事の放棄」に追いやっている。過酷な労働集約の上に効率化が進んできたという日本の物流の現実が、矛盾となって吹き出した。

■高速バス事故の余波

 「今年は関西の人たちにはうまい刺し身を食べさせてやれないかもしれない」――。

 サンマの国内水揚げ量の6割を占める北海道。中でもトップクラスを誇る釧路市で7月上旬、サンマの荷受け関係者を集めた懇談会が開かれた。8日の北海道東部の流し網漁解禁を控え、議論の中心になったのはトラック輸送の厳しさだった。

 釧路から関西方面にサンマを運ぶ日数はこれまで3日だったが、今年は少なくとも4日はかかりそうだという。たった1日延びただけと思うかもしれないが、鮮魚にとっては致命的。「4日では鮮度が保てない。冷凍も考えないといけない」(地元水産加工会社)。生と冷凍では、刺し身だけではなく焼きサンマにしても味が大きく変わる。水揚げ量が増える8月下旬が迫るが、北海道水産物荷主協会は「実際に西日本にどうやって運んでいいのか、まだ手探り状態が続いている」と頭を抱える。

 「神戸コロッケ」や「RF1」などの総菜店を展開するロック・フィールド。食材調達担当者は今夏、サラダなどに欠かせないニンジン、ダイコン、レタスなどが、主力の静岡工場(静岡県磐田市)に届かない事態を警戒する。こうした暑さに弱い野菜は、夏場、東北や北海道、九州の高原など涼しい遠方地から集めている。だが今夏に限っては、トラック運送会社から突如「納期に間に合わない」「運べなくなった」と連絡が入るリスクがあると、春先に取引業者から耳打ちされていた。

 なぜこうした「食卓の異変」が起きているのか。原因を遡ると2012年4月に関越道で発生した高速ツアーバスの事故に行き着く。金沢・富山―関東を片道3000円台で運行するバスが藤岡ジャンクション付近で防音壁に激突。乗客7人の命が失われ、乗客乗員39人が重軽傷を負った、あの惨事だ。

 「眠気を感じたのに運転を続けた」。前橋地裁は今年3月25日、自動車運転過失致死傷罪などに問われたドライバーに対し、懲役9年6月の実刑判決を言い渡した。ドライバーの責任もさることながら、事故から明らかになったのは、安全よりコストを優先しがちの運送事業者の姿勢だった。

 短期雇用で十分なドライバー教育をしない。名義貸しによる無許可営業。車両整備を怠る――。問題を重く見た国土交通省は昨秋、バスだけでなくタクシーやトラックなど自動車運送事業者全般に対する監査方針・行政処分の基準を改正。今年1月からその適用を始めたところ、北海道と九州の中小零細トラック業者を中心に大混乱が湧き起こった。

トラックのドライバーの労働時間は例外的な場合でも16時間が上限だ

トラックのドライバーの労働時間は例外的な場合でも16時間が上限だ

 「今までのようには荷物は届けられない」「仕事を断るしかない」「減車する」「働き者のドライバーにやめてもらう」……。理由は「新ルールの違反で処分されると、即廃業になるから」だ。

 実はトラックのドライバーの労働時間(1日の拘束時間)は労働基準法に基づく「厚生労働大臣の告示」という公的な縛りで、基本13時間、例外的な場合でも16時間が限度と決められている。15時間を超える回数は1週間に2回以内。さらに睡眠を含む1日の休息は連続で8時間以上とらなければならない。

■即退場でルール厳守を迫る

 つまり、長距離トラック1台では最大で片道16時間のエリアしか荷物を運べない。高速道路の渋滞や途中休憩などを考慮に入れると、北海道から南下する場合は東京近郊、九州から北上する場合は名古屋近郊で時間切れになり、そこから先に運ぶには別のトラックに荷物を乗せ替えるなどの対応が必要になる。しかも、その業務に携わったドライバーは翌週まで長距離運転ができない。これが本来のルールだ。

 だがこれまで、中小零細のトラック業者でこのルールを厳守しているのは少数派だった。「配送時間短縮への荷主の要求は高くなっても低くはならないのが業界の常識。業者間の競争も激しく、ルールを守っていたら食えなくなる」(宮崎県のトラック業者)

 実際のルール運用では、国交省は整備や点呼など他の安全管理項目を含めて違反件数を実質的に点数化して、それに見合った行政処分をしている。これまでは、労働基準監督署などの調査で乗務時間違反が露見しても違反点数が一定の範囲で収まっていれば、数台のトラックが短期間使えなくなる軽い処分で済んだ。

 だが、新規制では違反根絶を目指し行政処分を大幅に厳罰化した。労働時間の上限を組織的に無視した場合などは「重大かつ悪質な違反」と認定。「会社丸ごと30日間の事業停止」という処分を下す。1カ月間、すべてのトラックを動かせず、1銭も入ってこない。中小零細トラック業者にとっては、即、経営破綻を意味する厳しい内容だ。

■6月に出た処分第1号

 労働時間の上限を守る方法は実はいくらでもある。1台のトラックに2人のドライバーが乗って交代しながら運転する。中間地点に支社を作ってそこでドライバーを交代する。途中、提携事業者のトラックに乗せ替える。だが、中小零細の運送事業者にとってこれらは机上の空論だ。「増えるコストを荷主は負担してくれない」(福岡市の業者)からだ。

重大なトラック事故が相次いでいることを受け、警視庁交通部などは7月2日、都内97カ所でドライバーに安全運転を呼びかけた(東京都大田区)

重大なトラック事故が相次いでいることを受け、警視庁交通部などは7月2日、都内97カ所でドライバーに安全運転を呼びかけた(東京都大田区)

 では、どうしたらいいのか。一発退場ルールにおびえる業者は知恵を絞る。「フェリーを使ってドライバーの休息時間を確保する」(北海道苫小牧市の業者)。「長距離の仕事はやめ、その分をカバーする近場の仕事を一生懸命探している」(北海道千歳市の業者)

 「厳しい仕事はどんどん下請けに回すようにしている」。北関東の中堅業者は、こんな実態を明かした。トラック数百台の業者から、数十台の業者へ。そして数台の業者へ。「個人に近い末端業者は今もルール違反をいとわない」。だが、末端へのしわ寄せにも限界が来ている。

 九州のある小さな業者は近く廃業する予定だ。数カ月前、労働基準監督署の職員がやってきて、ドライバーの日報と走行メーターの記録を持って行ったという。食材の戸別宅配会社向けに九州の新鮮野菜や特産果物を関東地方に届ける業務が安定収入だったが、これがあだになった。「16時間の上限など気にしない”優秀”なドライバーに毎週関東に行ってもらっていた。このままでは確実に処分される。その前に世話になったドライバーには次の職場を見つけてもらいたい」。自らも時々ハンドルを握る経営者は、既にあきらめたのか、法令違反の勤務実態を淡々と語った。

 国土交通省自動車局安全政策課によると、6月、全国初となる30日間の事業停止処分が関東の事業者に対して出た。近く重大な違反を犯した静岡県の事業者にも処分を出す方向だという。おびえが現実になったことで、長距離の仕事を手控える動きが運送業者の間で加速するのは確実だ。

■トラック野郎の夢

 長距離トラック運転手の代名詞、「トラック野郎」。俳優の菅原文太が主演した同名の映画が封切られたのは1975年で、79年までにシリーズ10作品が制作され国民的な人気を博した。高速道路が整備され、陸運が日本の経済発展を下支えした時代。銀幕の中で主人公の星桃次郎は愛車「一番星号」に乗り、日本全国を走り回った。

 この頃、星と一番星号にあこがれて長距離ドライバーになった者は少なくない。実際、90年代にバブルがはじけるまでは、きついながらも高給を得られる人気職種だった。20代に体力にまかせて数千万を稼ぎ、自分のトラックを買う。30代に仲間と運送会社を立ち上げ、さらに稼ぎまくる。派手な装飾の「デコトラ」は成功の証しで「フェラーリが買えるような資金を投じるドライバーも少なくなかった」(自動車部品店、トラックショップジェット千葉店店長の荒川久)。

 「仕事に一度出たら10日前後は家に帰らないのはザラ。その代わり月給は社長より多く、100万円を超えるのが当たり前だった」。こう語る大阪府門真市のドライバーは23歳からハンドルを握り、現在61歳。バブル崩壊後の「失われた20年」は、需要縮小と競争激化で月額給与は減り続け、今は40万円を割り込んだ。「ルール違反の処分も怖いし体力的にもきつくなってきた。年内に引退したい」

■人手不足のスパイラル

 常態化しはじめた離職、廃業。さらに燃料軽油の高騰でトラック運送業の採算は悪化の一途をたどっている。ドライバーの賃金は引き続き低く据え置かれ、嫌気がさしたドライバーの離職が増加。若者もトラック野郎になりたがらないという負のスパイラル。業界では来年にも14万人のドライバーが不足するという「2015年問題」がささやかれ出した。

 物流大手も危機感を募らせる。5月22日、都内ホテルに物流各社の幹部が顔をそろえた。「特積み」と呼ばれる地域をつなぐ長距離のトラック輸送を担う企業で、ヤマト運輸、西濃運輸、トナミ運輸、札幌通運、名鉄運輸、中越運送、第一貨物、カンダコーポレーションという業界の雄、8社が一堂に会した。

 物流版G8の緊急テーマは「10年先の(トラック)幹線運行を考えるプロジェクト」。代表格であるヤマトホールディングス会長の瀬戸薫は出席者に対して「既存の考え方にこだわらずアイデアを出せば生産性を高められる」とライバルどうしがスクラムを組む重要性を訴えた。地方に荷物を運んだ帰りのルートで空きスペースを都合しあう。複数の事業者がそれぞれの荷物を1台のトラックに乗せる、いわゆる共同運行など、検討するスクラムの内容は、これまで激しい競争を繰り広げてきた企業同士としては考えられなかったものばかりだ。

 長距離トラックを巡る負のスパイラルの影響は目下、鮮魚や青果といった日持ちしないものの輸送にとどまっているが、中長期的にみると、あらゆる物流分野に広がっていくのは確実な情勢だ。大手は提携や値上げを含めた荷主への協力要請で乗り切ろうとしているが、日本のトラック運送業者の9割は中小零細事業者だ。安全性の観点から、そして人手不足の観点から、日本の物流システムが限界に近づいている。

 運送業は、ドライバーの肉体的ながんばりに頼るというビジネスモデルからどう脱却するか。この根源的な難問を解かない限り、納期厳守、即日配送、配送無料を売りにする宅配や製造業を支えるジャストインタイムの仕組みに、ほころびが波及していく懸念がぬぐえない。

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白元が破綻 ハーバード大出身の4代目が落ちたワナ

白元が破綻 ハーバード大出身の4代目が落ちたワナ

5月29日、民事再生法の適用を申請し経営破綻した白元の本社(東京都台東区)=共同

5月29日、民事再生法の適用を申請し経営破綻した白元の本社(東京都台東区)=共同

 ミセスロイド、アイスノン等の家庭用品で知られる白元(東京・台東)は5月29日、東京地裁に民事再生法を申請した。負債総額は今年に入って2番目に大きい250億円。製造業ではかなりの大型倒産だ。テレビCMなどでなじみ深い同社の突然の倒産に驚いた方も多かったのではなかろうか。誰もが知っている有名企業だが、一部週刊誌などで報じられた4代目社長の派手なイメージとは裏腹に、実は会社の内情は火の車であったことが帝国データバンク情報部のその後の調べでわかった。

■初代と二代目は堅実経営だった

 白元は1923年(大正12年)に鎌田商会として創業した老舗企業。創業者の鎌田常助が、ナフタリン防虫剤の製造販売を始めたのが前身となった。その後、50年(昭和25年)に株式会社となり、初代社長には当時営業を担当していた鎌田泉が就任し、その長男の耕、次男の収、そして耕の息子の真が2006年(平成18年)に4代目社長として経営を引き継いでいた。

 このように白元の経営は、鎌田一族による同族経営が築かれていた。初代社長の泉は創業以来「本業一筋」を理念に掲げ、「身の丈に合った経営」を貫くことで業界トップに上りつめてきた。

 今も販売している防虫剤「パラゾール」は50年、冷蔵庫の普及で考えられた消臭剤の「ノンスメル」は63年、72年には靴下止めの「ソックタッチ」など、国民生活における身の回りの小さな快適さを求める商品を世の中に送り出した。周囲からは「ロングセラーの宝庫」と呼ばれる商品をそろえていたことが、老舗ならではの強みとなっていったのだ。「安定と着実の白元」は、こういった創業者の理念が引き継がれてきたからこその評価であった。

 ところが3代目の収が社長に就任したころから、「身の丈」から外れた経営が目に付くようになる。2000年ごろから始まった子会社の設立と、M&A(合併・買収)戦略により、銀行からの借金は膨らみ続ける。中国で現地法人を設立したほか、明治薬品工業、大三、キング化学などを立て続けに買収し、グループの拡大を進めていった。

しかし、結局は事業拡大路線が思ったほどの効果が出ないことから、僅か数年の間に吸収合併や、統廃合を強いられる。結果的に、収の社長就任以来、借入金は3倍以上の80億円弱にまで膨れ上がった。

 そして06年に4代目の真が社長に就任する。慶応大学経済学部を卒業し第一勧業銀行(現みずほフィナンシャルグループ)に入行。白元入社後に米ハーバード大学ビジネススクールでMBA(経営学修士号)を取得するなど、輝かしい経歴を持つ新社長は売り上げ至上主義を掲げ、業界の慣習である「政策販売」のワナに掛かってしまう。これは、問屋に対して返品を前提とした過剰販売を行うことをいう。例えば、問屋Aに対して2億円の商品を販売。A社は20~50日後には仕入れ代金2億円を支払うが、一定期間後に1億円分の商品を白元に返品する。すると白元は差額の1億円プラス利息を「特売費」という名目で支払うシステムだ。

■監査法人の忠告を無視

 複雑に見えるが実態は「押し込み販売」。こうすると見かけの売り上げは大きくなるが、余計な「特売費」がコストとなって白元の収益を圧迫する。しかも、返品された商品がすぐに別の取引先に売れるとは限らず、時機を逸すると不良在庫になってしまう可能性が高い。破綻の直前には売上高約300億円のうち、3割を超える95億円がこの「政策販売」だったという。もちろん、このような無理な販売を繰り返せば、赤字の拡大につながるといった指摘は、白元の監査法人からあった。しかし、真は聞く耳を持たなかったことから、さらに傷を広める結果となった。

 実は秘密裏に進めていた再建計画案の策定途上でもこの「政策販売」がきっかけで、ある業者が過剰な取引を持ちかけられたといった噂が広まり、自らの首をさらに絞める皮肉な結果も起こしている。

■100年続く企業の3要素

 帝国データバンクが保有する企業データベースによれば、老舗といわれる「業歴100年企業」には3つの特徴があることが分かっている。一つ目が事業承継(社長交代)の重要性。2つ目が取引先との友好な関係。3つ目が「番頭の存在」だ。白元はこの3つが十分に備わっていなかった。

 社長1代の平均就任期間は約25年、100年では4回の事業承継が必要になる。初代社長の経営理念はほとんど場合、3代先へは直接は伝えられない。そこで「社訓」「社是」といったものが約8割の老舗に存在するが、残念ながら白元の「本業一筋」「身の丈経営」は承継されなかった。

 取引先との良好な関係とは、厳しさの中でも信頼しあえる関係を言うが、社内では真に対して「取引先のカモにされているあまちゃん経営者」との声があった。

 さらに、同族企業にはガバナンスが働きにくい側面があるため、上司・部下、主従といった関係とは一線を引いた、寄り添う関係の番頭が必要になる。その果たす大きな役割はただ一つ「耳の痛い話ができる」こと。白元の場合、そうした人材の登場が少し遅かった。

 今回、火中の栗を拾う形となった、社長代行の間瀬和秀(56)は白元に勤続37年のたたき上げ社員だ。若い頃は住み込みで働いていたという逸話もある。既にスポンサーとして名乗りを上げた企業は50社を超えた。創業時の趣が残る東京上野にある本社ビルから、再建の第一歩が始まろうとしている。

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マレーシア機「事故でなく撃墜」

米副大統領、マレーシア機「事故でなく撃墜」

マレーシア機がウクライナ東部に墜落。墜落現場付近で撮影したとされる爆発の瞬間

マレーシア機がウクライナ東部に墜落。墜落現場付近で撮影したとされる爆発の瞬間

 【キエフ=共同】バイデン米副大統領は17日、ウクライナ東部で墜落したマレーシア航空の旅客機ボーイング777が「事故ではなく撃墜されたとみられる」と語った。米主要メディアは、米情報当局が地対空ミサイルで撃墜されたことを確認したと報じた。ウクライナのポロシェンコ大統領は「テロ行為」と述べ、親ロシア派武装組織による攻撃との見方を強く示唆した。

 マレーシア航空幹部は乗客280人のうち判明した233人の国籍を発表、日本人は含まれていない。15人とされる乗員は全員マレーシア人。国連外交筋は、国連安全保障理事会が18日にも緊急協議を開く方針を明らかにした。

ウクライナ東部のマレーシア航空機墜落現場で、散乱し炎を上げる残骸=17日(タス=共同)

ウクライナ東部のマレーシア航空機墜落現場で、散乱し炎を上げる残骸=17日(タス=共同)

 ウクライナ大統領府は、ウクライナ軍の輸送機AN26、戦闘機スホイ25がロシア領からの攻撃で撃墜された事態に次ぐ「3回目の悲劇」と指摘。マレーシア航空機が墜落した空域で、ウクライナ軍機が攻撃をした事実はないと明言した。大統領は内閣に事故調査委員会の設置を命じた。

 国連の潘基文事務総長は記者団に「完全かつ透明性のある国際的な調査が必要だ」と述べ、真相解明に積極的に関与する考えを示した。

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相続財産の基礎控除額が4割減に

相続財産の基礎控除額が4割減に

 相続税は2015年1月1日から制度が改変されて増税になり、対象になる人が一気に増える。この相続問題を、年間1万件もの相談を受けている相続コーディネーターの八木美代子氏(株式会社ビスカス代表取締役)が解説する。

 最大のポイントは「相続財産のうち、この額までは相続税がかからない」という額(基礎控除額)が、4割減と大幅に減らされること。

 現行の基礎控除は「5000万円+相続人の数×1000万円」。8000万円の財産があっても、子供が2人なら7000万円までは相続税がかからず、残った1000万円にだけかかる。これが2015年1月1日以降には「3000万円+相続人の数×600万円」に引き下げられる。子供2人なら基礎控除は4200万円になるので、前と同じ例でも残りの3800万円に相続税がかかるようになる。

 相続に関連する基本用語は、円滑な相続を行うためにも知っておいて損はない。

 財産を遺そうとする人は、自らの財産をどのように相続させるかを、遺言によって自由に決めることができる。遺言では、具体的な財産を誰が取得するかを定めるだけでなく、相続分そのものを定めることができる。これを「指定相続分」という。

 しかし、すべての人が遺言をしている、あるいは遺言で相続分の指定をしているわけではない。そのため遺言がない場合、あるいは遺言によって指定相続分が示されていない場合には、法律があらかじめ目安となる相続分を定めている。これを「法定相続分」という。

「指定相続分」や「法定相続分」などの「相続分」とは、相続人が自ら主張できる権利の割合を指すのではなく、被相続人が与えた権利、あるいは便宜上法律で設定された共有持分ということができる。

 そして実際には、相続人となった人や遺言で財産の一定割合の取得を指定された人(包括受遺者)は、協議において、その与えられた権利や共有持分を主張したり放棄したりすることで、最終的にすべての遺産の取得先が決められる。その協議の結果によっては、遺言、あるいは法律の規定通りの割合で分割していなくてもよい。

 ただし、すべてが遺言で自由に定めることができるわけではない。

 配偶者や子、あるいは父母などの直系尊属が相続人の場合は、法律上取得することを保障されている相続財産の割合がある。これを「遺留分」という。その遺留分の対象者が複数いる場合に各相続人の遺留分の基準とするのが法定相続分だ。

 各相続人の具体的な相続分を算定する上で使用できる二つの制度がある。

「特別受益の持ち戻し」と「寄与分」

「特別受益の持ち戻し」とは、相続人の中で被相続人から遺贈を受け、または婚姻、養子縁組のためもしくは生計の資本として贈与を受けた人(特別受益者)がいるときに、その遺贈や贈与の価額をいったん相続時の財産の価額に加えて相続財産とみなし、その価額に法定相続分を掛けたものからその遺贈や贈与の価額を控除した残額をその人の相続分とする制度だ。

「寄与分」とは、相続人の中で、被相続人の事業に対する労務や資金の提供や被相続人の療養看護などによる財産の維持・増加への貢献(寄与)をした人がいるときは、相続時の財産からその人の寄与分を控除したものを全体の相続財産とみなし、寄与した人の法定相続分にその寄与分を加えたものをその人の相続分とする制度だ。

 相続トラブルは、財産がたくさんある人の話で、相続対策は高齢になった時に考えればよいと思いがちだが、決してそうではない。若い人が不慮の事故で亡くなるケースもあるからだ。

 相続といっても、独身ならば、結果的に父母に遺されることになり、父母がいなければ祖父母、さらに兄弟姉妹へと移っていくことになる。子供のいる夫婦であれば、相続関係は単純で、配偶者と子供となる。 注意が必要なのは、子供のいない結婚している若い夫婦だ。

 若い夫婦の場合、相続関係は配偶者と実の父母となる。法定相続分は配偶者が3分の2、父母が3分の1だ。遺言で配偶者にすべての財産を相続させるという内容も可能だ。ただし、父母には「遺留分」を主張する権利がある。遺留分は亡くなった人の近親者に認められた相続の留保財産分だ。全体の遺留分は、相続人が配偶者と父母であれば、財産の2分の1となり、父母の具体的な遺留分は、2人で6分の1(2分の1×3分の1)となる。

 父母は相続する財産が自身の遺留分を下回っている場合に、配偶者に対して自身の遺留分を保全する目的として、財産の返還を求める「減殺請求」を行うことができる。そのため、遺言で配偶者にすべての財産を相続させようとしても、父母から遺留分の減殺請求がなされる可能性がある。

 2015年以降の基礎控除額は3000万円+(600万円×法定相続人の数)となる。 夫に相続が発生して、妻と子供2人が相続人の場合の基礎控除額は、
3000万円+(600万円×3人)=4800万円
となるので、相続財産がそれ以下の場合、相続税を納付する必要はない。

 相続税は自分には関係ないから、「争族」(相続に伴う争い)も関係ないと思っていても、実は「争族」は起こりうる。相続財産が、たとえ100万円しかなくても、相続人間が財産分与でもめれば「争族」であり、その解決は煩雑になる。

 「争族」が起こるケースには、いくつかの典型的なパターンがある。

 例えば、兄弟の仲が悪いケース。両親のどちらかに相続が発生する、いわゆる一次相続の時には問題は起こりにくいが、両親とも亡くなってしまった二次相続の時に「争族」が始まる。

 兄弟仲が良くても、それぞれの配偶者同士は赤の他人だ。正当な権利を主張するだけで、何ら悪いことを言っている訳ではないのだから、義兄弟の家庭のことなんて構っていられない。妻から「兄弟と私たち家族の幸せのどっちが大切なの?」と言われ「争族」に参加してしまう人も多い。

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空の快適性、日本勢巻き返す エアライン満足度調査

空の快適性、日本勢巻き返す エアライン満足度調査

 「日経ビジネス」が2年ぶりに実施したエアライン満足度ランキング。エグゼクティブ約6600人が選んだ満足度の第1位は、シンガポール航空だった。2年前の調査ではベスト3圏外だった日本勢も、今回は2位と3位に返り咲き、失地回復を果たした。だが安心してはいられない。ベスト5にはある「異変」が潜んでいた。世界の航空業界を脅かす新興勢力の台頭だ。新興勢力は刻々と勢いを増して、航空勢力図を塗り替えている。ついに始まった航空下克上。ANAとJALは、生き残ることができるのか。

 早朝の羽田空港国際線ターミナル。シンガポール航空のチェックインカウンターに若い男女が訪れた。シンガポール経由でインドネシアのロンボク島に行き、結婚式を挙げるという。

 2人のパスポートを見たスタッフは思わず顔を見合わせた。新婦のパスポートの有効期限切れまでの期間が半年を切っていたのだ。通常、インドネシアに入国するには、6カ月のパスポート残存有効期間が必要になる。このままでは新婦だけがインドネシアに入れず、式は挙げられない。2人は途方に暮れていた。

 「それでは結婚式ができなくなります。何とかなりませんか」

 この要求は、明らかに航空会社の裁量を超えている。だが、スタッフは「NO」とは言わなかった。「ご希望に沿えないかもしれませんが、何とかしてみます」。

 2人がロンボク島の空港に着くのは約13時間後。わずか半日の間に解決策を見つけねばならない。

 スタッフたちは一斉に動き始めた。国内のインドネシア大使館や現地のインドネシア入国管理局、挙式予定のホテル、ウエディングプランナー。あらゆる関係者に連絡を取り、2人が入国する手立てを探った。

 「身元が保証できるなら例外的に入国を認めましょう」

 入国管理局の話を受け、スタッフは挙式予定のホテルと交渉。身分保証書を書いてもらい、現地スタッフが入国管理局に書類を提出した。

 果たして入国は認められ、翌日、カップルは無事に式を挙げられた。

 「どんな場合でもお客様の希望に寄り添い、最大限の努力をすること。我々は決してNOとは言わない」

 日本支社長のデイヴィッド・リム氏は、自社の強みをこう語る。

■2位に大差を付け、首位守ったシンガポール航空

 日経ビジネスが2年ぶりに実施した「エグゼクティブが選ぶエアライン満足度ランキング」で、総合1位を獲得したシンガポール航空。スコアを分析すると、「サービス」部門は、ランキング内にある29社中最高得点に達し、残る4項目でも満遍なく高得点を獲得している。2年前の調査同様、2位から30点以上の差を付けて1位についた。

 冒頭のような「NOと言わない接客」を評価する声が集まるほか、「座席」部門も、29社中2位と高スコアだった。

 同社は超大型機のエアバス380に、ファーストクラスを上回るクラス「スイート」を設けて話題を集めた。座席と通路を隔てる専用ドアを設けて、ホテルの客室のようなプライベートな空間を作る豪華シートだ。贅(ぜい)を尽くしたハードと乗客に寄り添う細やかな接客。これらを兼ね備えたことが、トップになった大きな理由だ。

シンガポール航空がエアバス380で導入した最上位クラス「スイート」

シンガポール航空がエアバス380で導入した最上位クラス「スイート」

 シンガポール航空を追うのが、2位の全日本空輸(ANA)と3位の日本航空(JAL)。2年前の調査ではANAが4位、JALは6位と、両社ともベスト3圏外だったが、失地回復を果たした。

 日本勢2社が評価されたのは「サービス」「運航の安全性・正確性」の2項目。これらはいずれも、この2年で日本勢が強さを磨いてきた項目でもある。

 例えばサービス面ではANAが努力を重ねてきた。最も影響力を持つ英調査会社スカイトラックスの格付けで、ANAは2013年以降、2年連続で最上位の5つ星を獲得している。

 「5つ星エアラインを目指す」と同社が宣言し、本格的なサービス改革に乗り出したのは2012年のこと。当時の5つ星は、シンガポール航空などの6社だけ。その一角に入るべく、新プロジェクトを立ち上げた。

【調査概要】
約40万人の「日経ビジネスオンライン」読者にメールで調査を依頼。過去3年間に利用したエアラインについて、「サービス(客室乗務員の対応・機内食・エンターテインメント)」「座席」「運航の安全性・正確性」「路線ネットワークの広さ・加盟しているアライアンス」「コストパフォーマンス・マイレージ」の5項目で採点してもらった。それぞれの項目につき「非常に満足(+100点)」「満足した(+50点)」「普通(±0点)」「やや不満(▲50点)」「非常に不満(▲100点)」で採点したものを平均化し、合計スコアを算出。ランキングのスコアは計6634人(会長・社長697人、その他役員773人、部長1909人、課長2309人、係長946人)の回答を反映した。調査対象は東京、名古屋、大阪のいずれかにデイリーで就航、または上記3都市の複数に乗り入れている国際線58社。回答数が100人未満の航空会社はランキングの対象外とした(ファースト&ビジネスクラス、エコノミークラスのランキングは除く)。調査は日経BPコンサルティングに委託した。注:▲はマイナス

 それまでもサービス向上のために様々な取り組みを進めていたが、その多くが付加価値の高いサービスを追い求める内容だった。だが「サービス水準を上げるなら、お客様に不満を抱かせないことの方が大事だと考え直した」とCS&プロダクト・サービス室の小沢ちあき・主席部員は説明する。高付加価値サービスでプラス評価を稼ぐより、小さな不満によるマイナス評価を潰そうと発想を転換したのだ。

 「予約の電話がつながりづらい」「ラウンジが混む」「座席の間にゴミがある」。それらの不満を解消できれば、大きなコストをかけずに満足度は上がる。「5つ星プロジェクト」では慢性的な問題に踏み込み、課題ごとに責任者を決めて、期限を定めて成果を追わせた。

 運航の安全性・正確性では、JALの取り組みがユニークだ。同社も米リサーチ会社フライトスタッツの調査で、2012年から2年連続、定時到着率世界一の表彰を受けている。

 定時性を高めるのに最も大切なのは、部門を越えた社員同士の連携だ。予約担当者から地上係員や整備、客室乗務員などがスムーズに作業を連携させない限り、定時運航は実現できない。

 その点、JALでは経営破綻後、部門をまたいだ社員の語り合いが義務付けられ、現場には強い連帯感が生まれた。これによって定時性が高まった。

 ただ一方で、JALは破綻時に路線を大幅に縮小している。そのため「路線ネットワーク・アライアンス」部門のスコアはANAより11ポイントも低い。この差が2位と3位を分けた。

■前回調査では圏外、4位に躍り出たトルコの航空会社

 サービスに定評のあるシンガポール航空が1位につき、アンケート回答者が多く利用する日本勢が2位と3位で後を追う。ベスト3の顔ぶれだけを見れば、今回の調査結果に大きな驚きはないはずだ。

 だが少し目線を広げると、ある「異変」に気付く。4位のターキッシュエアラインズ(旧名トルコ航空)と5位のエミレーツ航空の存在だ。

 2年前の調査にターキッシュの名前はない。回答数が100に満たず、ランキング圏外になったからだ。エミレーツは前回の2位から順位を落としたが、それでもベスト5に食い込んだ。

 両社とも、日本への定期便は1日3便だけ。日本やアジアの航空会社に比べれば、その存在感は希薄でしかるべきだろう。それにもかかわらず、なぜ4位、5位にランクインしたのだろうか。

エミレーツ航空では、時差による体調不良の軽減に効果があるという照明システムを採用

エミレーツ航空では、時差による体調不良の軽減に効果があるという照明システムを採用

 ターキッシュは「コストパフォーマンス・マイレージ」、エミレーツは「座席」の項目で首位になった。

 ターキッシュは、長距離線でもファーストクラスを設けていない。しかし、だからといってサービスの質が劣るわけではない。ビジネスクラスとプレミアムエコノミーには、機内食の専任スタッフがついて、シェフが調理、盛り付けて料理を出す。客室乗務員があらゆる作業と並行して、料理を盛り付け、配膳する他の航空会社と比べれば、サービスの質は歴然としている。

ターキッシュエアラインズのビジネスクラスとプレミアムエコノミークラスでは「フライングシェフ」が機内食を調理する

ターキッシュエアラインズのビジネスクラスとプレミアムエコノミークラスでは「フライングシェフ」が機内食を調理する

 機内では、無線インターネットの接続が無料。機内エンターテインメントでは、スポーツ中継などのテレビ番組もリアルタイムで視聴できる。そのうえイスタンブールで乗り継ぐ乗客には、市内のホテル宿泊や観光ツアーを無料で提供する。それもこれらのサービスを、上位だけでなく全クラスに提供するのだ。「コストパフォーマンス」で首位になった理由はここにある。

 一方のエミレーツは、「座席」の項目でトップ。エミレーツのエアバス380では、機内に上位クラス向けの専用ラウンジを設けたり、ファーストクラスにシャワースパを備えたりして豪華さをアピールする。ビジネスクラスの座席にはミニバーまである。

 ただしエミレーツは、他社と共同でマーケティングをする航空連盟(アライアンス)に入っていない。そのため、「路線ネットワーク・アライアンス」と「コストパフォーマンス・マイレージ」の2つの項目で、大きくスコアを落としている。

 両社が評価された項目は異なるが、その戦略はよく似ている。徹底してサービスを磨くのは、両社が拠点とするイスタンブールやドバイへ飛びたい乗客を獲得するためだけではない。拠点とする空港からは、ターキッシュが250都市以上、エミレーツが140都市以上に飛んでいる。つまり、両都市の「その先」にまで乗客を運ぶのが、2社に共通する戦略だ。

 各航空会社が持つ都市間の直行便から、一段上のサービスで根こそぎ顧客を奪っていく。日本の直行便が少なくとも、拠点以遠の目的地の豊富さゆえに、数十便に匹敵する存在感を持つ。これがターキッシュとエミレーツが上位に食い込んだ要因だ。

 このランキングは、日本で実施され、主として日本人の乗客が回答したものである。それでもこのランキングに表れた小さな「異変」は、世界の航空業界で今、まさに起きているそれと相似をなしている。

 世界の空を統べるのは誰か。異変の向こうを眺めれば、既存キャリアと、それに挑む新興勢力の激しい争いが浮かび上がる。

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