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パイロット、世界で争奪戦に 20年で50万人不足

 世界の航空会社の間でパイロットの争奪戦が始まった。アジアや北米、欧州での旅客需要が増え、今後20年で現在の規模に匹敵する50万人が新たに必要となる見通しだ。米航空3強は米国内からパイロットの囲い込みに着手。日本の2社や新興勢も世界規模での人材育成に取り組む。各国政府も自国の航空会社を後押ししている。

 米航空業界は2001年の同時テロから燃料費が高騰し、08年には金融危機が発生して旅客需要が激減した。この10年ほどはパイロットを含むリストラを優先してきた。だが、アメリカン航空とUSエアウェイズが合併して3強に絞られ、業界が安定してきた。

 「空の旅のニーズは世界規模に広がった。パイロットの確保は今後の航空会社の競争力のカギになる」。米ユナイテッド航空のジム・コンプトン副会長はこう強調する。

 成長するアジア市場の開拓などをにらみ、パイロットの囲い込みを始めた。ユナイテッドはまず一時帰休させていたパイロットを全員、復帰させた。旅客需要が好調な米国内ではパイロット不足のため一部路線の縮小を迫られており、人員増を急ぐ。アメリカンも今後5年間で1500人のパイロットを新規に雇い入れる。デルタ航空も新規機体の導入などに合わせパイロットを増やす。

 定年延長を探る動きもあるが、パイロット側には波紋が広がっている。ルフトハンザ・ドイツ航空は65歳までの定年延長に伴う経過措置を巡って組合と対立。約5千人のパイロットがストライキを辞さない構えをみせている。

 米航空機大手ボーイングによると、今後20年間で新たに50万人近くのパイロットが必要になる。現在と比べほぼ倍増する計算だ。増加分のうちアジア太平洋、北米、欧州の三大市場で4分の3を占める。

 高度な専門技術が必要なパイロットは育成に多大なコストや時間がかかる。将来の需要増を見越し、航空会社の間でパイロット育成を新たなビジネスに育てようという動きも広がっている。

 ANAホールディングスは米国でパイロット訓練会社のパンナムを買収、自社の不足分を補う一方、米航空会社などにも送り込む。最大の需要地であるアジアでも4月からタイで訓練ビジネスを始める。新興勢でも中東のエミレーツ航空が本拠を置くアラブ首長国連邦(UAE)ドバイの空港に訓練校を設置。15年から毎年160人のパイロットを輩出する計画だ。

 欧州航空機大手エアバスは顧客である航空会社に対し、パイロット育成費用の一部を肩代わりする形で、機体の納入費用を実質的に値引きする新たな提案を始めた。

 政府も歩調を合わせる。米国は1月からパイロットが一日に乗務できる時間を延長できるよう規制を緩和した。日本も15年度にも同様の制度を採り入れる。航空会社が抱えるパイロットがフルに活動し、需要増に柔軟に対応できるようにする。国土交通省は私立大学などを対象に、パイロット教育に必要な奨学金制度を拡充する。

 パイロットの高額な人件費は日本航空や旧アメリカン航空の経営破綻の一因となった。世界の航空会社にとってパイロットの人件費をどう抑えるかも、新たな経営課題となりそうだ。

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