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雇用延長、対策多様に 高齢者の給与上積み

雇用延長、対策多様に 高齢者の給与上積み
現役の労働時間減、賃金評価見直しも

希望する高齢者の継続雇用を義務付ける「高年齢者雇用安定法」が施行されて4カ月あまり。60歳を超えて働き続ける人の年収を増やすため、雇用・賃金制度の見直しが多様化している。NTTグループは現役世代の賃金上昇を抑制して捻出。YKKグループは賃金体系全体を見直す。20~50歳代へのしわ寄せにもつながる制度には慎重論もあるが、労働力不足や技能伝承の観点からも高齢者の待遇改善が進んでいる。

 高齢者の賃金引き上げの動きが広がるのは年金の支給開始年齢が段階的に引き上げられるため。もっとも総人件費を大きくは増やせず、原資捻出に向けた対策が広がる。

 1つは現役世代の賃金を抑制する手法だ。NTTグループは10月、再雇用する60歳以上の従業員の年収をこれまでの200万円台前半から300万~400万円に引き上げる。原資確保に向けて現役世代の賃金体系で年功要素が強い基準内賃金を圧縮、成果部分を強める制度を取り入れる。成果部分の比重が高まる40歳前後から上の世代の賃金上昇は従来より緩やかになる。

山崎パンは年収倍に

 山崎製パンは4月から60歳の定年後に再雇用した従業員に現役世代とほぼ同じような働き方を求める一方、年収を従来の約2倍に相当する300万円強とする賃金制度を導入した。1日8時間・週5日勤務を原則とし、残業や深夜の交代勤務を課す。

 同時に現役世代の総労働時間の削減に取り組む。年間休日数を2014年度は12年度比で2日増やし、残業時間を削減。結果的に現役世代の賃金は減り、再雇用者の年収が増える仕組みにする。

 山崎パンは毎年300人近い定年退職者が見込まれており、現役世代の割合が減少する見通し。「従来のままでは工場のシフト勤務が難しい。高齢者を戦力と位置付けつつ、現役世代の過大な負担を減らし、世代間で異なる仕事量と賃金を平準化する」と人事第一部の原田周二部長代理は言う。

 現役世代への影響を回避しようという取り組みもある。サントリーホールディングスは4月から60歳以上の社員の年収引き上げを開始、60歳到達前の5割弱にとどまっていた水準を6~7割に上げた。65歳までの全社員が新制度の対象になる5年後には人件費が十数億円増える見通しだが、経費削減などで吸収する。

YKK、定年延長に切り替え

 賃金制度の抜本的な見直しが3つ目の手法だ。雇用延長の制度は(1)再雇用(2)定年の引き上げ(3)定年の廃止がある。YKKグループは多くの企業が選択する再雇用制度を見直し、4月から定年延長に切り替え始めた。65歳までの雇用を前提とした賃金体系を年金の支給開始年齢が65歳となる25年までに整備する。

 人件費の増加を抑制するため人事評価を見直す。能力給の運用を弾力化、従来はほとんどなかった実力不足による降給を数年後をメドに開始し、評価を適正化する。もっとも突然の降給には現場の動揺も予想される。このため「能力要件書」と呼ぶ判断基準を社員に明示して理解を求める。

 「65歳定年時代」に向け、高齢者の活力を生かそうという企業の制度設計見直しは広がっている。IHIは59歳になった時点で定年を60歳から65歳の間で選ぶことができる「選択定年制」を導入。三菱電機は13年度から雇用を延長した社員の給与を12年度の年収ベースから約2割引き上げた。

高年齢者雇用安定法

正式名称は「高年齢者の雇用の安定等に関する法律」。従来は定年を60歳以上にするように企業に努力義務を課してきたが、1998年から「60歳定年」を義務化した。2000年の改正で、定年の引き上げ、継続雇用の導入などによる65歳までの雇用の確保を企業の努力義務とした。さらに04年の法改正で、厚生年金の支給開始年齢引き上げに併せ、65歳までの雇用を段階的に義務付けた。

雇用延長[ Employment extension ]

現在、多くの企業で定年としている60歳を過ぎても働けるようにすること。2004年に成立した改正高年齢者雇用安定法で、2006年4月から段階的に雇用延長することが義務付けられた。厚生年金の支給開始年齢が65歳に引き上げられるのに伴い、年金支給までの空白期間を埋めるのが狙い。13年度以降は65歳とする。雇用延長の手段としては定年制の廃止、定年年齢の引き上げ、定年退職後の再雇用などがある。

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