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スカイマークはなぜANAへ出資要請を検討するのか

スカイマークはなぜANAへ出資要請を検討するのか

スカイマーク(SKY/BC、9204)は1月に入り、全日本空輸(ANA/NH)を傘下に持つANAホールディングス(9202)に対して、出資を要請する検討を始めた。監督官庁である国土交通省も、SKY側がANAに要請すれば認める意向だ。

ANAへの出資要請の検討を始めたスカイマーク=14年6月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 読売新聞が9日夕刊でこの件を報じた際、SKYは「検討に入った事実はなく、決定した事実もない」と否定。同社幹部はAviation Wireに「コードシェアについて検討を要請しているが、出資要請は一言も言っていない」と説明していた。

 しかし、10日までに複数の関係者がAviation Wireの取材に対し、SKYが出資要請を検討していることを明らかにした。

 10日に発表となった12月の利用実績は、搭乗者数が2カ月連続で前年同月を下回り、ロードファクター(座席利用率)も12月の数字としては、2005年以来9年ぶりに50%台に落ち込むなど、状況の厳しさが浮き彫りになった。

 日本航空(JAL/JL、9201)やANAとのコードシェア提携の話題から一転、SKYはなぜ、ANAへ出資要請の検討を始めなければならないのだろうか。

どうなる経営陣

 SKYは2014年11月、JALに対してコードシェアによる経営支援を求めた。JALは財務体質が芳しくないSKYへの出資は、リスクになると判断。当初から出資は視野になく、コードシェアの検討に落ち着いた。

独立経営を目指すスカイマークの西久保社長=14年7月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 ところが、JAL単独による支援に官邸が難色を示したことから、SKYの西久保愼一社長は12月15日、ANAホールディングスの幹部と面会。提携を打診した。

 関係者によると、「年末の時点では、2月か3月にJALとANA両社とのコードシェア提携で着地を予想していた」という。しかし、年末年始をはさみ、SKYはANAへ出資を要請する検討に入った。ANA側の出資比率は、20%以下を想定しているとみられる。

 一方で、西久保社長は独立経営に強いこだわりがある。SKY幹部は「(ANAから)役員を変えろと言われたこともない」と話すが、企業再生の一般的な姿として、出資する企業から新経営陣が送り込まれる可能性が高い。

 このため、仮にANAが出資に向けて動き出したとしても、西久保社長の進退をはじめ、経営体制などで交渉が長引くことも考えられる。

羽田路線の不調響く

 では、なぜSKYは1月に入り、ANAに出資を要請する検討を始めたのか。理由の一つとして、12月の利用実績が芳しくなかったことと関係があるとみられる。

羽田路線の不調が響いたスカイマーク=14年5月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 12月の搭乗者数は2カ月連続で前年同月を下回る5.7%減の47万4694人。一方、提供座席数は4.2%増の87万4212席だった。この結果、ロードファクターが54.5%と前年同月を5.6ポイント下回った。

 全路線平均のロードファクターが50%台に落ち込んだのは、2014年1月の57.9%以来11カ月ぶり。12月の数字としては、2005年の51.4%以来9年ぶりに50%台を記録した。

 ANAやJALなどのフルサービス航空会社の場合、損益分岐点となるロードファクターは75%前後と言われており、コストを抑えている場合は80%以上が望ましいとされる。

 一方、2004年から2014年までの10年間で、12月としてもっとも高い値となったのは2010年の78.5%。前月の同年11月には、総2階建ての超大型機エアバスA380型機の導入について、SKYとエアバスは基本合意書を締結している。

 そして、基本合意から3カ月後の2011年2月にA380を4機発注し、同年6月にはオプション(仮発注)だった2機も正式発注に切り替えた。SKYは2012年3月期まで、過去最高益を3期連続で更新しており、絶好調の中でのA380発注だったと言える。

 12月のロードファクターが低迷していた9年前の2005年ごろは、西久保社長が2003年に就任後、中型機ボーイング767-300型機と小型機737-800型機の2機種体制から、数年がかりで737に統一を進めていた時期だ。737に機材を統一したのは2009年9月で、その後の快進撃につながっていく。

 2014年12月の利用実績を見ると、SKYの直行便23路線のうち、半数にあたる12路線のロードファクターは50%未満。35.5%だった神戸-鹿児島線など、40%に満たない路線も4路線あった。

 しかし、地方路線はもともとロードファクターが低い。より深刻だったのは、羽田発着5路線のうち、札幌線と神戸線、福岡線のロードファクターは60%を超えたが、これまでのように70%以上をたたき出した路線はゼロだった。

 SKYは利益の8割を羽田路線が生み出しており、これまでは羽田路線の大半が70%台、好調であれば90%台のロードファクターを達成することで、地方路線の収益をまかなっていた。

 これが今回、従来はコンスタントに80%前後の値を出していた、稼ぎ頭の札幌線を含めて不調だったことで、全体の平均値を引き下げる結果につながった。

不振続くA330路線

 「良いシートを安く提供する」という西久保社長の判断で2014年6月から導入した、エアバスA330-300型機(271席)も、頭の痛い存在だ。

ゆったりとしたグリーンシートを売りにするスカイマークのA330=14年3月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 全席に座席幅が広い「グリーンシート」を備えたA330で運航する羽田-福岡線は、提供座席数は35.8%増の16万3639席と大幅に増加。一方、搭乗者数は10.0%増の10万3781人にとどまり、ロードファクターが63.4%(前年同月比14.9ポイント低下)と振るわない。

 羽田-福岡線の利用実績を見ると、6月のA330就航から12月までで、提供座席数の前年同月比の伸び率を、搭乗者数の伸び率が上回ったのは8月のみ。つまり、お盆休みで混む8月以外は、供給過剰な状態が続いている。

 A330は10機すべてをリース導入する計画で、現在5機が就航済み。SKYは現時点でA330を計画通り導入する予定だが、ANAが出資するとなると機材計画も見直しになる可能性がある。

 ANAは2014年7月、エアバスに小型機A321neoを23機、A320neoを7機を発注している。SKYとしては、エアバスとの7億ドル(約839億円)と言われる違約金の交渉が優位に進めばとの思惑が、見え隠れする。

 A380の違約金交渉がANAと組むことで優位に進むとして、もしA330の導入機数を見直すとなれば、新たな問題が発生する恐れがある。これまで違約金交渉で名前が挙がらなかった、エンジンメーカーのロールス・ロイスも名乗り出ることが考えられるからだ。SKYはA380とA330のエンジンメーカーとして、ロールス・ロイスを選定している。

 A330の活用策として、日本人に人気のハワイなど国際線の中距離路線への投入案もささやかれる。しかし、SKYの2014年9月末時点の現預金残高は45億4900万円。2014年3月期末から25億1600万円減少している。売上の伸び悩みだけではなく、手元資金も厳しい状況が続いており、現状のままでは投資がかさむ勝負に出るのは厳しい。

 国内線の戦略機材として肝いりで導入したA330を、今後どう活用していくのだろうか。

   ◆ ◆ ◆

 西久保社長は経営の独立を訴える。しかし外部から出資を受けるとなれば、経営陣の刷新など、本意ではない決定を下さざるを得ないことになる可能性がある。

 これまでの新規航空会社の再建では、エア・ドゥ(ADO/HD)やスカイネットアジア航空(ソラシド エア、SNJ/6J)、スターフライヤー(SFJ/7G、9206)と、事実上ANA傘下に入ることで、再建を進めてきた。

 良くも悪くも、大手2社と距離を置くことに固執しなかったことで、3社は航空会社として生き延びている。SKYはエアバスとの違約金問題も、いまだに好転の兆しはない。

 土俵際に追い詰められたSKY。最後に残った第3極として、難しい判断が迫られる。

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