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2015年3月

個別株より「指数買い」 年金マネーが動かす相場

個別株より「指数買い」 年金マネーが動かす相場
日本株、パッシブ運用に10兆円流入か

 日経平均株価が15年ぶりの高値を更新した先週、ひときわ輝きを示した銘柄がある。東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランド(OLC、証券コード4661)だ。上場来高値を連日で更新。年初からの株価上昇率は3割を超えた。

 値上げしても落ちない集客力で業績は堅調。株主還元にも積極的で2015年3月期の年間配当は前期比20円増の140円に増える見通しだ。だがPER(株価収益率)が46倍台になるまで株価を押し上げたのは、そうした個別の要因だけではない。

 「MSCIジャパン最小分散指数」――。カギを握るのがこの聞き慣れない指数に連動した買いだ。価格変動が小さく、相場下落局面でも損失が膨らみにくいよう設計された指数で、OLCの組み入れ比率は1.9%と、約150銘柄のうちエーザイ(4523)に次ぎ2番目。指数連動の買いが増えれば、自動的にOLC株への買いも膨らむ。

 この最小分散指数が注目され始めたのは昨年夏、約19兆円の資産を持つ地方公務員共済組合連合会(地共連)が同指数の採用を打ち出したからだ。その後、低リスクの運用を目指す投資家の資金が流入、武田薬品工業(4502)、花王(4452)など他の構成銘柄も大きく上げた。

 個々の企業の収益力や成長性を見て銘柄を選び抜くのではなく、指数に連動する銘柄を根こそぎ買う──。こうした「パッシブ運用」が今、株式市場を席巻している。従来の日経平均や東証株価指数(TOPIX)などだけでなく、収益性や値動きを加味した「進化した指数」のスマートベータが登場、これが指数連動の運用を加速した。

 野村証券の村上昭博チーフ・クオンツ・ストラテジストは「日本の株式市場には今後、10兆円近いパッシブ運用の資金が流入する」と予想する。その中心にあるのが、巨鯨とも呼ばれる公的マネーだ。

 137兆円の運用資金を持つ年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は昨年末で19.8%の株式の比率を25%に高める方針。うち9割はパッシブ型の運用が占める。地共連を含む3つの共済年金も20日、GPIFと同様に株式比率を25%に高めると発表したが、パッシブ型が中心になると見られる。

 指数連動の運用拡大は世界的現象だ。モーニングスターの調べでは14年、米国で4200億ドル(50兆円)強の資金が指数連動のパッシブ型ファンドに流れ込んだ。個別銘柄に選別投資する「アクティブ型」の実に9倍だ。

 とめどないパッシブの奔流。背景には新興国を含め世界中で年金マネーの存在感が増していることがある。巨額の資金を個別銘柄で運用するのは容易ではない。指数連動の運用の方が透明性が高く説明がしやすい。

 流れを決定づけた論文が09年に出た。ノルウェー政府年金基金の資産運用を分析した結果、ファンドマネジャーによる運用成績の上乗せ分はほとんど観測されなかったという内容だ。

 「コストを含めて考えれば、パッシブ運用のほうが効率的との考えは強まっている」。証券投資理論に詳しい名古屋市立大学の臼杵政治教授は話す。パッシブマネーで思わぬ銘柄が上昇するなど、影響を踏まえた戦略が欠かせなくなっている。

 地道に企業を調査して、成長株を選んで投資するアクティブ運用は死んでしまうのか。必ずしもそうではなさそうだ。

 独自の分析で中小型株などを発掘し高収益を上げるファンドはなお多い。三井住友アセットマネジメントは今年に入り、銘柄選別を運用収益の源泉とする商品の販売を強化した。企業分析力にさらに磨きをかける。

 世界的なパッシブ運用の奔流は市場をどう変え、投資家はそれにどう対応しようとしているのか。最前線の動きを探った。

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「社員に優しい」は買い、コスト増にも経営者自信

「社員に優しい」は買い、コスト増にも経営者自信

 日経平均株価が15年ぶりの高値を更新した株式市場で、賃金や福利厚生費を増やすといった「社員に優しい企業」が注目されている。コストを増やしても成長できるという経営者の自信の表れとしてとらえられているためだ。社員の懐が温かくなれば消費の拡大に向かい、経済全体が好循環へ向かうだけに、息の長い投資テーマになりそうだ。

 12日、8年ぶりの高値を更新した宿泊予約サイトの一休。訪日外国人観光客が増えて都内の宿泊施設の需給が引き締まり、客室単価が上昇。受取手数料が増えるとの期待が買い材料の1つだが、実はそれだけではない。

 ある運用会社のファンドマネジャーはこう評価する。「稼いだ利益を社員に還元する会社だ」。一休はアベノミクス相場が始まった直後の13年3月に社員に一律50万円の特別賞与を支給。14年4月には3%のベースアップ(ベア)を実施するなど社員に報いてきた。

 来週は全社員130人が箱根の高級旅館「強羅花壇」に泊まる初めての社員旅行を催す。総費用は約1千万円。今回は、筆頭株主として受け取る株式配当を原資に森正文社長が個人で支出するため会社の費用は増えないが、「来期の大幅増益を目指し社員の結束力を高める」(森社長)のが狙いという。


 人件費の増加は企業にとっては固定費の上昇につながるのに、買われるのはなぜか。大和住銀投信投資顧問の門司総一郎氏は「コスト増以上に企業経営者が将来に自信があることを前向きに評価できる」と話す。

 今年に入って上場来高値をつけた「長崎ちゃんぽん」で知られるリンガーハットも2~3月にかけて450人の全社員を対象にハワイで経営説明会を開いた。渡航・宿泊費用は会社で負担する。外食産業では人材不足が深刻で、福利厚生の充実で人材の流出を防ぐ。


 賃金引き上げに動く企業の株も買われている。12日、1990年7月以来、四半世紀ぶりの高値を更新した味の素は、社員の基本給を一律に引き上げるベースアップを2年連続で実施する。業種別日経平均で上昇率トップとなった保険、同3位の陸運なども賃上げに動き始めた企業が多い。

 東証1部企業全体でも興味深い傾向が浮かび上がる。3月期決算企業を対象に4~12月期に「人件費・福利厚生費」を増やした171社を対象に、昨年3月最終週に同じ額を投資したとして平均株価をはじくと、12日までに37%上昇と日経平均の29%を上回った。

 人件費を増やした結果、今期営業減益になる企業の株も買われている。タカラトミーの株価は5日、約5年ぶりの高値を更新した。

 企業のヒトへの投資で社員の懐が温かくなり「国内総生産(GDP)の6割を占める消費の拡大につながると海外投資家は期待している」(三菱UFJモルガン・スタンレー証券)。企業がため込んできたお金の使い道として、株主配分、M&Aや設備投資に加え、従業員への投資という「3本の矢」を企業が放つことができるのか。株高持続の条件になりそうだ。

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「派遣法改正案」もし廃案なら10月以降の派遣現場は大混乱に陥る

「派遣法改正案」もし廃案なら10月以降の派遣現場は大混乱に陥る

 政府は、派遣労働のあり方を大きく見直す労働者派遣法改正案について、3月中旬に今国会に提出する準備を進めている。改正案は、過去2度提出されたが、厚生労働省の凡ミスもあって、いずれも廃案に追い込まれた。厚労省は今度こそ成立させたいと必死だ。今年10月までに成立していないと、派遣業界が大混乱に陥りかねないからだ。しかし、「格差是正」解消を旗印に掲げる民主党など野党は「派遣労働者が固定化する」として3度目の廃案を狙っており、成立は容易ではない。

 企業が派遣労働者を受け入れる期間は現在、派遣法で定められている通訳や財務処理、秘書、事務機器操作など26の「専門業務」は無期限、それ以外の「一般業務」は同じ職場で最長3年が期限となっている。

 改正案はまず、専門業務と一般業務の区分を撤廃する。

 3年働いた派遣労働者について、派遣先の企業が労働組合から意見を聞いた上で別の職場に配置換えすれば、引き続き同じ派遣先企業で働き続けることができる。派遣労働者を送り出す派遣元企業は、同一の派遣先企業で3年働いた派遣労働者に対して、新たな派遣先の紹介や派遣先に直接雇用を求めるなど雇用安定措置を講じるよう義務化する。派遣労働者のキャリアアップや正社員化を後押しする狙いがある。

 政府は昨年の通常国会に改正案を初めて提出した。このときは、派遣会社への罰則規定に関する条文にミスが判明。本来は「1年以下の懲役」とすべきところを「1年以上の懲役」との誤記がみつかり、審議入りできずに廃案になった。明らかに厚労省の失態で、村木厚子事務次官ら厚労省幹部は処分を受けた。

昨年秋の臨時国会では、審議入りはしたものの、「政策通」でならす塩崎恭久厚労相があいまいな答弁を繰り返して野党に糾弾された。その上、衆院が解散されたため、また廃案となった。自民党厚労族は「呪(のろ)われた法案だ」と苦笑する。

 与党は3度目となる提出を前に、「派遣就業が臨時的・一時的なものである」と改正案に明記するなどの修正を政府に求めた。「生涯ハケン」「ずっと派遣で働く人が増える」と野党が批判するのに配慮し、派遣社員が少しでも多く正社員になれるような仕組みであることを強調するよう促した。

 それでも、民主党は冷ややかだ。岡田克也代表は9日、党最大の支持団体、連合の集会で「こういう修正でよいとする神経が分からない。2度あることは3度ある」と述べ、改正案成立の阻止を訴えた。共産党の志位和夫委員長も20日の衆院予算委員会で「(改正案では)派遣先の大企業が正社員を派遣社員に置き換える事態が進むのは避けられない。2度も廃案になった法案を提出することは許されない」と攻撃した。

 もし、今国会で改正案が成立しなければどうなるか。

 派遣先が違法な派遣と知りながら派遣労働者を受け入れている場合、派遣先は派遣労働者を直接雇用したとみなされる「労働契約申し込みみなし制度」が10月に施行される。みなし制度が適用される違法派遣の1つに「派遣期間の制限に抵触する派遣」がある。これに抵触しかねないのが事務機器操作などの「専門業務」だ。そもそも、職場での本来の業務とそうでない業務の線引きがはっきりしない。派遣法改正案が成立しなければ10月以降、派遣労働者が「専門業務の範囲を超える仕事をやらされ、期間制限に抵触している」と訴え、派遣先企業に正社員として雇用を求めるケースが相次ぐ可能性があるという。

派遣先がこうした混乱を事前に避けるため、専門業務にかかわる派遣労働者の受け入れを敬遠する恐れもある。厚労省や与党は「成立しなければ、派遣労働者が派遣先を訴える訴訟が相次ぎ、混乱する」と警戒する。

 実は、みなし制度は民主党政権時代の24年3月に成立した改正労働者派遣法の修正協議で、「制度導入は3年後」との先送りで合意した経緯がある。当時協議に参加したのは民主党と野党の自民、公明両党だった。偶然にも今年はその3年後にあたり、今回の改正案の法案審議とほぼ重なった。

 改正労働者派遣法も成立には困難を極めた。当初は派遣労働者の待遇改善を目的に規制強化策を盛り込み、22年4月に法案を提出したが、自民、公明両党が「過剰規制は雇用縮小になる」と反発し、継続審議扱いが続いた。

 最終的には3党による修正協議で、製造業への派遣禁止など規制強化策の削除で合意した。その結果、修正法案は約2年を経て成立にこぎつけたが、成立を優先するあまり当初の目的だった待遇改善策は中途半端な形となった。それだけに、今回の改正案に対する民主党の反発について「意趣返しの側面もあるのではないか」(与党幹部)との見方を示す。

 厚労省は現時点で、労働者派遣法改正案を含めて計9本の所管法案を今国会に提出する予定だ。働いた時間ではなく成果で賃金を決める新たな労働制度(ホワイトカラーエグゼンプション)を盛り込んだ労働基準法改正案など、重要法案がめじろ押しだ。ホワイトカラーエグゼンプションに対しても、民主党は「残業代ゼロ法案」と攻撃している。

 対決法案が多く、派遣法改正案の審議に多くの時間を割くのは容易ではない。派遣法改正案について与党からは国会に提出後、野党と協議して修正することもやむを得ないとの声が漏れる。それでも、対決姿勢を強める民主党などが軟化するようにはみえない。

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全日空、8年ぶり初任給上げ 16年4月から約5%

全日空、8年ぶり初任給上げ 16年4月から約5%

 全日本空輸は2016年4月、総合職(事務職・技術職)の初任給を引き上げる。上げ幅は約5%。同社が初任給を上げるのは8年ぶり。人手不足感が強まるなか、採用活動で商社や銀行など大手企業との競合例が増えているため。
 16年度に総合職の賃金制度を改定するのにあわせ実施する。大卒の場合、現行の20万1848円から21万2000円にする。院卒の初任給は公表していないが、大卒と同様に約5%上げるという。
 全日空が2日に発表した16年度の新卒採用計画では、総合職事務職は前年度計画比で5割増の30人程度、同技術職は8割増の45人程度を採用する。客室乗務員やパイロット訓練生の新卒については初任給を据え置く。
 大成建設や清水建設、鹿島など人手不足感が強まっている建設業界では今春から初任給を上げる企業が出ている。

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美容室でカット、安倍首相も違法?

美容室でカット、安倍首相も違法?

 安倍晋三首相はほぼ毎月、東京・渋谷の美容室に通っている。妻の昭恵さんから勧められたのがきっかけだ。カットの後のヘッドスパがお気に入り。ただ、美容師が首相の髪を切るのは「厳密に言うと法律違反の疑いがある」(厚生労働省幹部)。

■ほしい人雇えず

美容師と理容師が一緒に働く店をつくるには仕切りが必要(東京都渋谷区のQBハウス青山オーバル店)

美容師と理容師が一緒に働く店をつくるには仕切りが必要(東京都渋谷区のQBハウス青山オーバル店)

 1978年、厚生省(当時)は局長通知で美容師が髪を切るのは女性客との法解釈を示した。男性客のカットができるのはパーマなど「美容行為の一環」の場合だけだ。

 男性カットは多くの地域で黙認されるようになったが、今も高知市の美容室には時々、保健所が「メニューを見せてください」と抜き打ち検査に来る。男性カットがあれば是正を求める。規制対策で前髪だけパーマをかける店もある。

 同市の保健所には以前、理容組合の幹部が「美容師の男性カットを放置するな」と抗議に来た。「おかしなルールでも法律は法律。違反があると言われれば指導せざるをえない」(保健所幹部)。境界線は他にもある。

 「今回は理容師を雇えなくなりました」。格安カット大手「QBハウス」を展開するキュービーネットの採用担当者は、新店を出すたび、応募者におわびする。美容師の応募者が多ければ美容室として届け出るため、理容師は雇えないことが多い。美容師と理容師が同じ店で働くことは業法で禁止されているためだ。

 「人手が足りないのに雇えない。応募者も働けない」(北野泰男社長)

 理容室と美容室を分ける法律は終戦後の47年にできた。引き揚げ者らがハサミ一つで開業する「青空床屋」が続出し、店同士の争いが絶えなかった時代だ。その後、議員立法で細かい規制が入り、縄張りが固まった。

 なぜ形骸化した規制を残すのか。所管する厚労省の答えは「議員立法は手をつけにくい」(幹部)。いったん導入した規制は、存在意義を失っても続いてしまう。

■試験は現実離れ

 「燃やしてみましょう」。昨秋、福島県でクリーニング師の国家資格試験を受けた原田順一さん(48)は試験官からライターと灰皿を手渡され、戸惑った。燃え方の速さで繊維の種類の見分けがつくという。「お客さんの服を燃やせるわけないのに」(原田さん)

 実技試験では半世紀前の電気アイロンが登場した。温度調整機能はなく、霧吹きをあてたときの「ジュッ」という音を頼りに温度を確かめる。勤め先のクリーニング会社で練習した原田さんは合格がかなわなかった。

 なぜ実際に使う技能を問わないのか。試験問題をつくる福島県庁の担当者は「ベテランのクリーニング師が問題を変えることに反対する」という。

 人手不足なのに新規参入を制限する理美容やクリーニング業の姿はサービス業全体の映し絵にも見える。日本のサービス業の労働生産性は米欧より低い。古い縄張りをなくし意欲ある人が参入すれば、需要を生む技術革新も加速するだろう。

 3年目に入ったアベノミクス。岩盤規制を崩すには、法律の看板を直すだけでは足りない。細部に潜み旧態を維持するワナをあぶり出せるか。その成否は日本経済の構造改革の試金石となる。

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